トランプ関税と貿易摩擦はビットコインに有利に働くか グレースケール考察
米暗号資産(仮想通貨)投資会社グレースケールは9日に発表した市場レポートで、関税と貿易摩擦は中期的にはビットコイン( BTC )の普及にプラスに働く可能性があると主張した。
トランプ政権が2日にグローバルな相互関税を発表したことで、株式市場(S&P 500)は12%下落し、ビットコインも約10%値を下げた。しかし、この下落局面を通じて、ビットコインの下げ幅が株式に比べて小さかった点にグレースケールは注目。リスク調整後は、株式よりも安定していたと評価した。
また、さまざまな指標から仮想通貨では投機的ポジションが比較的低いことが示唆されており、今後数週間でマクロリスクが緩和すれば、ビットコイン価格は回復する可能性が高いと述べた。
一方、中期的には、高い関税はスタグフレーション(景気後退とインフレが同時に起こる状態)を引き起こす要因となる。歴史的に見ると、スタグフレーションは株式や債券などのリターンにはマイナスであり、金のような希少な資産には有利な傾向があるとレポートは指摘した。
その背景として、1970年代に株式・債券の年率リターンがインフレ率(7.4%)を下回る中、金価格は年率30%上昇した例を示している。
ビットコインがスタグフレーション時に、金のようなパフォーマンスを見せるかどうかは、投資家がビットコインを金と同様に希少な資産とみなすか否かが大きく影響する。しかし、「デジタルゴールド」と称されるビットコインの特性は、その可能性を示唆しており、スコット・ベッセント米財務長官が「ビットコインは価値保存手段になりつつある」との認識を示したことからも、「勇気づけられる」とグレースケールは述べた。
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関税と貿易摩擦は米ドルの需要を減らし、中期的にはビットコインの採用を後押しする可能性があると、 レポートは主張する。
米国との貿易量が減少することで、ドル建ての取引が減り、さらに関税の引き上げが他国との対立を引き起こした場合、価値保存手段としての米ドルへの需要も弱まるためだ。
現在、米ドルの外貨準備シェアは米国経済の規模を上回っており、貿易摩擦により米ドルベースの金融市場との結びつきが弱まった場合、各国は外貨準備の多様化を加速させる可能性がある。
実際、西側諸国によるロシアへの制裁を受け、多くの中央銀行が金の購入を増やしている。また、米国は戦略的ビットコイン備蓄を創設し、チェコ国立銀行はビットコインの保有を検討、ソブリンウェルスファンドがビットコイン投資を開始するなど、準備資産の多様化の一環として、ビットコイン保有が有力視され始めている。
また、レポートは1971年の「ニクソン・ショック」(関税導入と金兌換停止)で、結果的に27%のドルの下落に結びついた例とトランプ関税ショックを比較。今回のトランプ関税も、継続的なドル安を招く可能性が高いと指摘した。さらに、ドル安が市場メカニズムとして貿易赤字是正に寄与する可能性にも言及した。
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レポートでは、トランプ関税は短期的には経済成長を鈍化させインフレを促進するが、米政権が推進する税制改革や規制緩和が成長を支える可能性があると主張している。
政策の進め方によりスタグフレーションの程度は変わるため、見通しは不確実だとしながらも、今後1年から3年間、持続的なドル安とインフレが続く可能性が高いとグレースケールは見ている。そして、歴史的に、このようなマクロ経済環境下では、金やビットコインのような希少資産に有利となることが示唆されていると述べた。
さらに、トランプ政権は強力な仮想通貨支持政策を打ち出しており、現在「米国政府の政策変更に支えられた市場構造の急速な改善」が起きていることから、ビットコイン投資家の基盤拡大につながる可能性があると総括した。
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