仮想通貨の暗号基盤に量子リスク 2035年移行計画を米SECに提案
米証券取引委員会(SEC)に提出された最新の提案書が、量子コンピュータがビットコインやイーサリアムをはじめとする主要な仮想通貨の暗号基盤を崩壊させる可能性があると警告している。この報告書は9月3日にSECの仮想通貨タスクフォース向けに作成されたものだ。
提案書によると、暗号学的に関連する量子コンピュータ(CRQC)が実現すれば、現在の仮想通貨で使用されている楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)などの暗号技術を破ることができる。専門家の推定では、2034年までにRSA 2048を破る能力を持つ量子コンピュータが登場する確率は17-34%とされている。
特に懸念されているのは「今収集、後で復号化(HNDL)」と呼ばれる攻撃手法である。悪意のある攻撃者が現在暗号化された取引データを収集し、将来の量子コンピュータで復号化(暗号化されたデータを元の「平文」に戻すこと)することを狙っている。この脅威により数兆ドル規模の仮想通貨資産が危険にさらされるリスクがある。
関連: エルサルバドル、ビットコイン準備金を複数のアドレスに移管量子リスクに備える
対策として、提案書は「ポスト量子金融インフラフレームワーク(PQFIF)」という包括的な移行計画を示している。このフレームワークは、NIST標準化されたML-KEMやML-DSAなどの耐量子暗号アルゴリズムへの段階的移行を目指すもので、2035年までに連邦システムの完全移行を求める国家安全保障メモランダム10(NSM-10)にも準拠している。
金融業界では既に一部の機関がパイロットプログラムを開始しており、バンコ・サバデルが4か月間のポスト量子暗号導入プロジェクトを完了。しかし、銀行ウェブサイトの3%しかポスト量子暗号技術をサポートしておらず、業界の対応は大幅に遅れている状況である。
今回の提案は投資家保護と市場の完全性維持を目的としており、仮想通貨エコシステムの安全な将来を確保するための緊急行動を呼びかけている。量子コンピュータの脅威が現実化する前に、金融機関と規制当局の協調した取り組みが必要であるとされている。
関連: 量子コンピュータはビットコインの脅威となるのか?専門家がリスクと対策を解説
米SEC・CFTC、仮想通貨無期限先物取引の国内展開などを検討
米SEC・CFTCは金融市場24時間取引市場拡大、永続契約の国内回帰、予測市場とポートフォリオ証拠金制度の導入などを検討。仮想通貨規制統一化で共同声明を発表。...
ハイパーリキッド(HYPE)、独自ステーブルコインUSDH発行計画 手数料80%削減へ
分散型取引所ハイパーリキッドが独自ステーブルコインUSDH発行と手数料の80%削減などを計画している。仮想通貨HYPEは過去1年間で630%上昇しているところだ。...
トークン化ポケモンカード市場「Collector Crypt」、独自トークンCARDSが10倍上昇
ポケモンカードをトークン化する「Collector Crypt」の仮想通貨CARDSが1週間で10倍上昇した。ガチャ需要が24億円に達し、NFT市場に新風が吹いている。...