トランプ関税発表控え緊迫するビットコイン市場、ETF資金流入とマイニング課題の狭間で
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン( BTC )は前日比+1.8%の1BTC=83,156ドルに。
4月2日に予告される”トランプ関税”の発動を控え、貿易摩擦やインフレ長期化に伴う金融政策への影響などの懸念から、市場では一段とリスク回避姿勢が強まっている。
トランプ大統領は、貿易相手国と同水準に関税を引き上げる「相互関税」の詳細について、米国時間1日夜から2日にかけて明らかにする考えを示しており、他国の反発必至な情勢だ。
各国は対抗措置の準備を進めているとされ、発表内容次第では世界的な貿易摩擦の激化が懸念される。特に中国やEU(欧州)を対象とした自動車や工業製品への高率関税が予想されており、グローバルなサプライチェーンに広範な影響を及ぼす可能性がある。
投資家は、このような相場の不確実性の高まりを受けて、金(ゴールド)などの安全資産への資金シフトを進める動きが顕著となっており、特にボラティリティの高い資産クラスでは売り圧力が増している。
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資産運用会社CoinSharesの 週次レポート によれば、先週の上場投資商品(ETP)への資金流入は、過去最大規模の資金流出から一転して2億2,600万ドル(約340億円)の資金流入を記録した。
過去最大規模の資金流出に見舞われた後も、暗号資産ETF(上場投資信託)への資金流入は9営業日連続で続いており、投資家が「積極的だが慎重な姿勢」を維持していることを示している。
ただし、先週金曜日には合計7,400万ドル(約111億円)の小幅な資金流出があった。これは米国のコア個人消費支出(PCE)が予想を上回ったことへの反応とみられ、最近の経済指標が成長鈍化を示唆しているにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派姿勢を維持する可能性が高まったことが影響したと分析している。
銘柄別では、ビットコイン(BTC)が1億9,500万ドル(約293億円)の資金流入で最も多く、全体の約86%を占めたが、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)が4週連続・総額17億ドル(約2,550億円)の流出から一転し、先週は総額3,300万ドル(約50億円)の流入を記録した。
主な流入先は以下の通り。
一方、この報告は3月29日までのデータに基づいており、トランプ政権の関税発表を控えた投資家心理の変化に伴う週明けの金融相場の影響は、次回のレポートで明らかになる見通しだ。
ビットコインのマイニング業界が新たな岐路に立っている。
3月末、ネットワークのハッシュレート(計算処理能力)が8億5,000万TH/sの史上最高値を記録し、セキュリティ強化を示す一方で、生産コスト上昇と関税問題という二重の課題に直面している。
Blockchain.comの データ によると、ビットコインのハッシュレートは3月に8億5,000万TH/sを突破。この増加は、マイニング参加者の増加とビットコインへの信頼の高まりを反映している。
しかし、ハッシュレートの急増にもかかわらず、マイニング収益は比例して増加していない。報告によれば、1ビットコインのマイニングコストは2024年初頭から倍増し、現在は87,000ドル(約1,300万円)に達しているという。主な要因は、電力料金の上昇とマイニング専用ハードウェアであるASICの運用コスト高騰だ。
さらに深刻な問題は、マイニング機器の供給に関する地政学的リスクだ。CoinMetricsによると、中国企業Bitmainが製造するASICマイナーは、ビットコインの総ハッシュレートの約59%〜76%を占めている。
2025年初頭に実施された税関管理の厳格化と中国からの輸入品に対する新たな関税により、米国のマイニング企業の一部でBitmain製品の受け取りに遅延が発生している。サウスカロライナ州モーリシャス通信によれば、米国は2018年以来、中国からの輸入マイニング機器に最大27.6%の関税を課しているが、最近の措置はさらなる規制強化の兆候を示している。
こうした環境の中、米国のビットコインマイニング企業Hut 8は、ドナルド・トランプ米大統領の息子であるエリック・トランプ氏およびドナルド・トランプ・ジュニア氏と提携し、American Bitcoin Corp.を設立すると発表。同社は「世界最大かつ最も効率的な純粋なビットコイン採掘事業」を目指すとしている。
このような動きは、厳しい競争環境下でも米国の機関投資家のマイニング産業への関心が高まっていることを示している。
ハッシュレートの上昇がセキュリティ向上というプラスをもたらす一方で、コスト増加と供給リスクという課題に業界がどう対応するかが、今後のビットコイン・エコシステムの発展に大きな影響を与えそうだ。
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