世界最大のオルタナティブ(代替)投資運用会社「ブラックストーン」は5日、旗艦プライベート・クレジット・ファンド「BCRED」に対し、2026年第1四半期に37億ドルの解約請求が殺到したことを明らかにした。純資産の約7.9%に相当し、通常5%の四半期解約制限を一時的に7%に引き上げて対応した。
ブラックストーン側は信頼回復に向け、自社および従業員による計4億ドルの自己資金注入を発表。ジョン・グレイ社長は、最近のメディア報道による過度な不安が引き出しを煽っているとの見解を示した。
一方、競合の米ブルー・アウル・キャピタルもファンドの解約を永久凍結しており、金融界全体で流動性懸念が高まっている。
そもそもプライベート・クレジットとは、銀行を介さずファンドが対象企業に直接融資する仕組みで、公開市場で取引されない非公開の融資を指す。2008年の金融危機後に銀行規制が強化されたことで急成長し、現在の市場規模は約2兆ドルに到達。その主要な投資手段であるBDC(事業開発会社)は運用資産3,000億ドル超を抱え、米国の直接融資の約4分の1を担う大きな存在である。
こうした状況に追い打ちをかけたのが、ヘッジファンドRubric Capitalによる告発だ。ロイターが2月26日に報じた同ファンドの投資家宛書簡によると、一部のBDCが四半期末に借入金をバランスシートから一時的に移動させ、負債を過少に見せかけている疑いがあるという。
書簡は「分配金削減への恐怖から、一部の悪質なプレーヤーがエンロン型の会計操作を行っている」と指摘。特定の投資銀行からのレポ取引類似のローンを利用し、四半期末直後に債務がバランスシートに再計上される手法だと説明した。
急成長の裏で、同市場の構造的な脆弱性が露呈している。長期融資を原資産としながら投資家に短期の解約権を認めた「流動性ミスマッチ」が根本にあり、解約請求が純資産の10%に達すればファンドが凍結される仕組みだ。
コスト上昇と分配金維持の圧力の中で、レバレッジを拡大する「不健全な業界慣行」が広がっているとRubric Capitalは警鐘を鳴らしている。
米証券取引委員会(SEC)は2026年の優先検査項目にプライベート・クレジットの評価手法と透明性を挙げ、精査に乗り出す方針だ。UBSによれば、デフォルト(債務不履行)率は3〜5%に達し、債務不履行企業を延命させるPIK(現物支払利子)の利用は、コロナパンデミック後の最高水準に迫っている。
流動性ミスマッチに加え、会計の透明性そのものへの懸念が浮上したことで、セクター全体への構造的な不信感が広がっている。
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仮想通貨市場への影響については、短期的なリスクオフ圧力と中長期的な代替資産としての再評価という、二面性のあるシナリオが指摘されている。
流動性危機が銀行システムに波及すれば、リスク資産全体から資金が引き揚げられ、ビットコインなども連動して下落するリスクが高い。
一方で、銀行システム外の「デジタルゴールド」としての期待も根強い。伝統金融の不透明さが露呈するほど、非中央集権型資産への逃避先需要は高まりうる。ただし、その現実味はプライベート・クレジット問題の深刻度次第だろう。
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