イーサリアム証券論争とXRP訴訟の裏側、SECの内部文書が明らかに
米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースは、情報公開法(FOIA)に基づいて入手した証券取引委員会(SEC)の内部文書を公開した。イーサリアムを証券と分類するかどうかについて、規制当局が非公開で議論していたことが明らかになった。
バイデン政権下のゲンスラー前SEC委員長は、「ほとんどの仮想通貨が証券に該当し、証券法の規制下にある」と主張。コインベースやリップル社など多くの主要仮想通貨企業を提訴し、「執行による規制」を強行してきた。しかし、今回公開されたSECの内部文書から、同機関内部では規制に対する不確実性を抱えていたことが露呈した。
2023年、ニューヨーク州は仮想通貨取引所KuCoinを、証券の定義を満たすトークンを提供し証券法に違反したとして提訴した。該当するトークンにはイーサリアムも含まれており、「ETH保有者に利益をもたらすため、第三者の開発者の努力に依存する投機資産」と当局は主張していた。
この訴訟で、ニューヨーク州司法長官事務所のシャミソ・マスウォスウェ投資家保護局長が、SECに対し「イーサリアムが証券であるという主張を裏付ける法廷助言書」の提出を要請していたことが、2023年6月の同氏のメールから明らかになった。
マスウォスウェ氏は、同訴訟においてイーサリアムが証券か否かは決定的要素ではないが、「裁判所がイーサリアムを証券と認めることは、投資家保護にとって有益だ」と述べていた。
なお、SECはイーサリアムの証券性について明示せず、この要請に応えることはなかったが、KuCoinは同年12月、2,200万ドルを支払い、ニューヨーク州から撤退することで当局と和解した。
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また、他の公開文書によると、SECは2021年にXRPが証券の特性を有するかどうかについて、内部メールで問い合わせていたことが分かった。その中では、リップル社が「撤退」もしくは「消滅」した場合、 XRP ブロックチェーンにどのようなリスクがあるかという質問が提起されていた。
2020年12月、SECはリップル社およびその幹部であるブラッド・ガーリングハウス氏とクリスチャン・ラーセン氏を、未登録証券を販売し証券法に違反したとして、すでに提訴していた。しかし、内部文書からは、SECが確固とした根拠と信念に基づいて執行行為を行なったのか、疑問の余地が残る。
4年以上に及ぶSECとリップル社の法廷闘争は2025年3月、SECによるリップル社に対する控訴取り下げでようやく終結した。ガーリングハウス氏は、裁判での勝利によって「XRPは有価証券ではない」との法的判断が確定したことを強調。一方で、同氏はSECこそが市場操作者だったとして、ゲンスラー前SEC委員長の強硬的な行動を非難し、SECの訴訟によって「XRP保有者から150億ドルもの価値が奪われた」と主張した。
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コインベースが公開した文書には、SECを含む複数の関係機関からの1万件以上のファイルが含まれている。同社は、仮想通貨規制の透明性を高め、長年業界を悩ませてきた規制の行き過ぎに対する懸念を明確にするために、これらの記録の公開を求めたと述べた。
仮想通貨政策を推進するトランプ政権に移行後、SECの方向性も大幅に転換した。
複数の主要仮想通貨企業に対する訴訟や調査は終了し、2023年6月に始まったSECのコインベースに対する訴訟も取り下げられた。同社の法務責任者ポール・グレワル氏は、「この2年間で変わったのはSECの政治的リーダーシップであり、仮想通貨との戦いにおいて、彼らは法の上に立っているかのように振る舞い、憲法に定められた議会の権限を簒奪した」と批判した。
規制の明確化を図るため、SECに仮想通貨支持派のヘスター・ピアース委員が率いる仮想通貨タスクフォースが立ち上げられた。同氏は、規制上の多くの問題を解決するには、証券法下で仮想通貨がどのように位置付けられるかを明確にすることが不可欠であると指摘。何が証券とみなされるかについて焦点を当てつつ、仮想通貨の分類方法の明確化に取り組んでいく予定だ。
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