LINE NEXT CSO「キム・ウソク」氏が語るWeb3大衆化戦略とは
現在、多くの人々が利用するインターネットはWeb2と呼ばれる。SNSやECサイト、動画配信サービスなど、大企業が提供するプラットフォーム上でユーザーがコンテンツを消費・生成する形態だ。一方、Web3は分散型の技術を活用し、ユーザー自身がデータやコンテンツの価値を直接享受できる新しいインターネットの形を目指している。
「Web3は難しい」「仮想通貨は怖い」といった先入観を払拭し、日常生活の中にWeb3を自然に溶け込ませる——。LINEメッセンジャーを基盤としたWeb3プラットフォーム「LINE Mini Dapp」と「Dapp Portal」を展開するLINE NEXTは、まさにそんな挑戦に取り組んでいる。
同社は2025年末までに1,000以上のプロジェクトを展開し、今年だけで1,000万人を超えるWeb3ユーザーを獲得するという意欲的な計画を掲げる。日本を含むアジア市場でWeb3の大衆化を目指すLINE NEXT CSOのキム・ウソク氏に、その戦略について独占インタビューを実施した。
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「Web2ユーザーへの拡張が最も重要な課題です。私たちだけではなく、Web3市場全体が解決しなければならない課題です」とキム・ウソク氏は語る。
同氏が掲げる普及戦略は3つの柱から成る。「一番重要なことはウォレットでの体験です。ウォレットがユーザーが認識できないレベルまで達したら、Web3はより普及できると思います」
このビジョンに基づき、LINE NEXTは既にLINE IDでの簡単なウォレット開設システムを構築している。秘密鍵やシードフレーズ(ウォレット復元のための単語の羅列)といった専門知識がなくても、普段使っているLINEアカウントからシームレスにWeb3サービスを利用できる環境を目指す。
「二番目の方法は、ユーザーがWeb3サービスを直感的に理解できるようにすることです。素晴らしい哲学や思想は言わないほうがいいと思います。ユーザーがどのくらいリワードをもらえるか、どうすれば早くもらえるのか、その経験が重要です」
「三番目は、LINEメッセンジャーとの連携をより強めることです。今年は以前とは全く違うレベルのメッセンジャーとの繋がりを計画しています」
「まず、Dapp(分散型アプリケーション)のオンボーディング時に厳格な審査プロセスがあります。審査ではトークンエコノミー、チームの履歴、これまでの成果などを考慮します」
この審査プロセスにより、スキャム(詐欺)や低品質なプロジェクトを事前に排除し、ユーザーが安心して利用できる環境づくりを進めている。
「もう一つは、Web3プロジェクトが持続的に収益を上げることが難しかったという構造的な問題の解決です。開発会社も継続的に収益を上げることができなかったため、プロジェクトを途中で諦めるチームが出てきました」
「Dapp Portalのプラットフォームはこういった問題を解決できると思います。ユーザーが日常的に使うLINEで良質なサービスが提供できれば、開発会社も責任を持って継続的な収益を得ながらビジネスを展開できます」
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「LINE NEXTとしての目標はWeb3を必ず大衆化することです。LINE Mini Dappとしての目標は、アジアのユーザーがより多くのリワードをもらい、より多くの権利が使える新しいサービスの生態系を作ることです」
同氏はWeb3を「ユーザーがお金を稼げるようなウェブ」と定義する。「Web3開発会社は従来のWeb2開発会社に比べて、ユーザーにより多くのリワードを提供し、権限を与えています」
「我々はWeb3開発会社と一般ユーザーが出会えるプラットフォームを提供します。LINEメッセンジャーを利用して、開発会社と一般ユーザーが出会えるようにしています」
「現在のところはKAIAチェーンに集中しています。個人的には、ブロックチェーンはどんどん境界がなくなると思います。ユーザーの観点では、ゲームサーバーを変えるくらい簡単にいろいろなチェーンを使うような状況になるでしょう」
「あえて他のチェーンをマルチチェーン(複数のブロックチェーンを連携させる仕組み)として提供するよりも、一つのチェーンに集中して、良い体験を提供することが現段階では重要だと考えています」
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「今年は最低1,000万人以上のユーザーが使うことを目標にしています」とキム・ウソク氏は明言する。「段階的には、Web3が最終的にWeb2に取って代わると思います。Web3はユーザーにより多くのリワードを分配・提供する技術であり、最終的には100%のユーザーがLINE基盤のWeb3を経験することが目標です」
「日本市場との親和性は、LINEメッセンジャーが最も重要です。KAIAは日本においてもホワイトリスト(規制当局に認められた暗号資産リスト)になっており、今年からはMini Dappプラットフォームを利用して日本でも拡大を進めます」
「LINEのMini Dappプラットフォームは『リアルユーザーが存在しているプラットフォーム』です。Web3市場ではボットユーザーも多いですが、LINE Mini Dappは日本や台湾など主要アジア諸国のユーザーが直接参加しています。売上の40%以上が日本で発生しており、日本と台湾のユーザーのARPU(一人あたりの平均収益)は300ドル以上だと言われているチームもあります」
キム・ウソク氏はターゲット顧客層を3つに分類する。「まず、独自トークンを作るWeb3開発会社、次にステーブルコインでリワードを提供する企業、そして純粋なWeb2ゲーム開発会社です」
「現在はサービスを一つずつ審査していますが、年内にはSDKで簡単にサービスを作れるようにして、プラットフォームを拡大します」
「主にアイテムの販売収益とNFT(非代替性トークン)の販売・取引手数料です。アイテム決済が約90%以上を占めています。従来のWeb3開発会社の売上はトークンの売上がほとんどでしたが、我々のプラットフォームではユーザーから課金を得るビジネスモデルが増えています」
今後は「開発会社が広告収入を得られるようにする計画もあります。また、開発会社がLINEユーザーに効果的にマーケティングを行えるようなパッケージも用意します」
「内部的な目標としては、今年でユーザーに100億円以上のリワードが分配できるプラットフォームになることを掲げています。4月末からトークンをリスティング(取引所への上場)するチームが出てくると予想され、ユーザーがトークンを受け取って取引できるようになると、『このくらい稼いだ』という話が広がるでしょう」
「最も収益を上げているコンテンツ開発会社は4億円ほどの売上です。成功しているチームの特徴はトークンエコノミーの設計ができること、Web2コンテンツとしての競争力も持っていることです」
「リワードをどのように分配するか、どういう人を貢献者として認識するか、貢献した人をどう待遇するか、そういった政策がトークンエコノミーです。基本的にはユーザーに対して透明で多くの財源を割り当てると、より多くのユーザーが集まります」
「Web2サービスではこういったことをあまり考えなくてよかったのですが、Web3では貢献した人にどれだけ分配するかを真剣に考えることが重要です」
「キャプテン翼チームは非常に優れたチームです。日本のIP(知的財産)に基づいた新しいWeb3プロジェクトは、非常に良い事例だと思います。IPに基づいたコラボレーションを拡大していく計画があります」
「IPはユーザーが新しいサービスに早く慣れるための力を持っているので、IPに基づいたプロジェクトとの連携を進めていきます」
「以前とは違うWeb3の大衆化を必ず達成したいと思います。Web3は自分の周り、友達、家族も使えるものだという認識を広げることが目標です。特に日本においてこの目標を達成したいと思います」
「Web3市場において世界が日本に注目しています。日本は規制の面でも先頭に立っており、Web3の成長に必要なIPや優れたコンテンツも多く持っています。日本市場で成果を作れば、世界のWeb3市場でも大きな影響力を持てると思います」
LINE NEXT CSOのキム・ウソク氏へのインタビューからは、Web3大衆化に向けた具体的な戦略と熱意が伝わってきた。Web2ユーザーをWeb3へ移行させるための3つの柱(ウォレット体験改善、直感的な理解促進、LINEとの連携強化)と今年中に最低でも1,000万ユーザーの獲得という明確な目標設定が印象的だ。
日本のLINEユーザー基盤を活用し、技術的な複雑さを隠しながらリワードのメリットを前面に出す戦略は、Web3普及の新たなモデルになる可能性がある。「リアルユーザー」の存在とその高いARPUは、LINE NEXTの強みとなっている。
Web3の真価はユーザーへの価値還元にある。LINE NEXTの挑戦が日本のWeb3市場にもたらす変革に注目したい。
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