JPモルガンのマネージング・ディレクター、ニコラオス・パニギルツォグロウ氏率いるアナリストチームは23日付のレポートで、ケルプDAOへのハッキングがDeFi全体のTVL(預かり資産総額)から数日間で3兆円相当の資金(実測値では2.1兆円相当)を消失させたと指摘し、セキュリティの脆弱性と成長の停滞がDeFiへの機関投資家の関心を引き続き制限していると警告した。ザ・ブロックなどが報道した。
JPモルガンのレポートが強調するのは、今回の被害がケルプDAO単体にとどまらず、直接の関与がないプロトコルからもリスク回避のために資金流出が連鎖した点だ。アーベなどから大口資金の引き揚げが相次ぎ、DeFi市場全体から約2兆円規模の資金が流出するオンチェーン版の取り付け騒ぎが発生した。
JPモルガンは「DeFiの相互接続性は通常時には強みだが、負の事象発生時には弱点になり得る」と指摘している。
JPモルガンの分析では、DeFiのTVLはドル建てでは2021年から徐々に回復しているものの、ETH建てでは長期にわたりほぼ横ばいで推移していると指摘。「こうした状況はDeFiの将来と、より広範な機関投資家への普及を支えるための有機的な成長が実現できるかどうかに疑問を投げかけるものだ」とレポートは述べている。
また今年のハッキングによる損失ペースは2025年と同水準で推移しており、スマートコントラクト監査の改善が進む一方でブリッジセキュリティの課題が依然として残存していると分析。
JPモルガンはさらに、ハッキング発生時にDeFi参加者がUSDTへ資金を移す「安全逃避」の傾向がより鮮明になっていると指摘した。テザーのUSDTは中央集権型取引所での流動性の深さとオンチェーンストレス時の換金のしやすさから選好されており、「USDTはオンチェーンポジションからの迅速な撤退において安全逃避の手段として機能している」と結論づけた。
オンチェーン分析会社クリプトクアントも同日、ケルプDAOのハックがDeFi全体で急激な流動性逼迫と借入金利の急騰を引き起こしたと報告している。
今後の注目点は、レイヤーゼロとケルプDAOの間で続く責任の所在をめぐる対立が業界標準の策定にどう影響するか、そしてJPモルガンが指摘する「ETH建てTVLの停滞」が続く場合、機関投資家がDeFiへの参入判断をいつ、どのような条件で変えるかといったところにある。