AI評価のスタートアップ企業「Merit Systems」の創業者でCEOのサム・ラグズデール氏は、Google広告に代表されるウェブ広告モデルは、オープンなエージェント型コマースの台頭によって時代遅れになると予測している。
ラグズデール氏は21日、a16z Cryptoの記事投稿で、1997年から2024年までのビジネスモデルは、ウェブページを閲覧するユーザーの「注意散漫」を利用し、広告からの収益をあげるものだったと指摘。一方、AIエージェントが自律的にものを売買する「エージェント型コマース」では、ユーザーの代わりにエージェントが、製品やサービスを検索し、比較して購入を完結させる。大規模言語モデル(LLM)を基盤としたAIエージェントは、広告に気を取られることはないため、広告は何の価値も生み出さない。
「注目の収益化」によって築かれた現在約3,000億ドル規模のオンライン広告市場は、広告を完全に無視するエージェント型コマースによって、そのビジネスモデルが根本から覆される可能性がある。
ラグズデール氏は、この変革の第一段階として、AIプラットフォームへの購買機能の統合を挙げている。
例えば、ChatGPTが導入した 即時チェックアウト(Instant Checkout)ツールでは、ユーザーが外部のウェブサイトを訪れることなくプロダクトやサービスを購入できる。こうしたソリューションは数億人規模のユーザーに普及し、販売者のコンバージョン率を高め、プラットフォーム側には5~10%の手数料をもたらすと期待されている。
しかし、ラグズデール氏は、ChatGPTの決済機能はあくまで段階的な改善にすぎず、社会全体を根本的に変革するものではないと指摘する。そのうえで、インターネット普及初期に存在した「囲い込み型ポータル」モデル(AOL)と、オープンプロトコル(HTTP、DNS、HTML、Mosaicブラウザ)による市場獲得競争に言及し、最終的に市場がオープンプロトコルを選択した背景を解説した。
ラグズデール氏によれば、囲い込み型ポータルは利便性は高かったものの、コンテンツ提供者や新規参入者が自由にアクセスできる環境ではなかった。一方、オープンプロトコルは、誰でも情報を発信・取得できる環境を提供し、イノベーションが生まれやすい構造だった。
「ChatGPTのチェックアウトは、エージェントコマースにおけるAOLだ」と同氏は言う。「厳選されたカタログであり、優れたユーザーエクスペリエンスを備えている」が閉鎖的なエコシステムであり、販売者のアクセスは厳格な選考プロセスによって制限されている。
一方、オープンエージェント型コマースは、「現代のHTTP」であり、AIエージェントが必要なものすべてに支払いを行えるシンプルなプロトコル群から成る。
オープンエージェント型コマースの有力なインフラとして、ステーブルコインを活用する二つのオープンプロトコル、コインベースのX402プロトコルと、TempoとStripeによるMPP (機械決済プロトコル)が注目されている。
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ラグズデール氏がオープンエージェント型コマースの課題として挙げているのが、いかに販売者とエージェントが互いを見つけ出すかという点だ。
ChatGPTやGeminiといった大手はすでに「会話型コマース」を展開しているが、決済やeコマース分野の新規参入者にとって同様のサービス構築はハードルが高い。
ラグズデール氏は、新たなAIエージェント専用の決済インフラ「AgentCash」を開発している。AIエージェントが、ユーザーに代わり、ウェブ上の有料サービスやAPIに対してマイクロペイメントの支払いを行えるようにするための決済インフラであり、決済と加盟店発見を統合したプラットフォームとなっている。
AgentCashは、Claude Code、OpenClaw、Codexなど、既存のエージェントにインストールすることが可能。また、販売者はx402scan.comまたはmppscan.comにサーバーを登録することで、2,000以上のAgentCashエージェントすべてに即座にアクセス可能になる。
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