「金持ち父さん」著者がビットコインを選ぶ理由とは?“いまさら聞けない”投資哲学も解説
世界的ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』の著者であり、投資家・教育者として知られるロバート・キヨサキ氏。
同氏は近年、ビットコイン( BTC )を繰り返し推奨しており、SNSやインタビューでの発言が暗号資産投資家の間で注目を集めています。
なぜ彼は法定通貨に不信感を抱き、ビットコインを“資産防衛”の手段として評価しているのでしょうか?
本記事では、キヨサキ氏の著書・投稿・インタビューをもとに、その思想や投資哲学を整理し、現代の資産運用に活かせるヒントを探ります。
ロバート・キヨサキ氏は、世界的ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』の著者であり、投資教育の分野で広く知られる日系アメリカ人の実業家です。作家・起業家・教育者として、多岐にわたる活動を展開してきました。
キヨサキ氏は実業家としての成功後、47歳で早期リタイアを実現。以後、投資や起業よりも「教育」にこそ情熱を注いできたと述べています。講演活動やラジオ・テレビ出演を通じて、お金に関する考え方や資産形成の重要性を広く伝えてきました。
また、開発したボードゲーム『キャッシュフロー』は、金持ち父さんの教えを楽しみながら学べる教材として人気を博し、世界中で利用されています。
ロバート・キヨサキ氏は近年、SNSやインタビューでたびたびビットコイン・ゴールド(金)・シルバー(銀)への投資を推奨しています。以下は代表的な発言や行動の一覧です。
これらの発言から、一貫して「法定通貨(特に米ドル)への懸念」と、「富の守り方・増やし方への哲学」が背景にあることがわかります。
キヨサキ氏がビットコインを推奨する最大の理由は、「法定通貨である米ドルへの根本的な不信感」と、「インフレによる通貨価値の低下リスクに備えるため」です。
キヨサキ氏はインフレの本質について「お金の価値が下がること」と説明し、法定通貨の供給量拡大に対して警鐘を鳴らし続けています。ドルの価値が失われる過程で、人々が資産を守るために選択すべき手段として、希少性が高く、中央の管理を受けないビットコインの重要性を繰り返し訴えています。
インフレ対策として、ビットコインを推奨する有識者はキヨサキ氏以外にも存在します。多くの場合、ビットコインの以下のような特徴を理由としています。
以下のグラフは、1ドルで買えるビットコインの量(satoshi換算)が過去14年で99.9%減少したことを示しています。インフレ環境下における、ビットコインの購買力を象徴するデータといえるでしょう。
一方で、必ずしもキヨサキ氏の考え通りに。ビットコインが価値を維持できるとは限りません。金融市場の下落時など、他の金融資産と同様にビットコイン価格も下落する可能性があります。
キヨサキ氏のビットコイン推奨の背景には、単なる経済的な判断だけでなく、長年にわたって語り継がれてきた「お金に対する哲学」があります。
ここでは、彼の代表作『金持ち父さん貧乏父さん』や関連書籍、講演の中から、現代にも通用する「お金との向き合い方」を抜き出し、私たちが経済的自由を得るうえで学べるポイントを整理します。
まず最初に、『金持ち父さん貧乏父さん』に出てくる「貧乏父さん」とは、キヨサキ氏の実の父親のことです。「金持ち父さん」とは、キヨサキ氏が子供の頃の親友の父親を指します。
キヨサキ氏は子供の頃、「ちょっとした運命のいたずら」で裕福な家庭の子供たちが行く公立学校に通っており、「貧乏人の子供」と言われた経験から、金持ちになる方法に関心を持つようになりました。
本書は「私には二人の父がいる。金持ちの父と貧乏な父だ。」と始まり、読み進めていくとそれぞれが誰を指しているのかがわかります。詳しい経緯は本記事では省きますが、金持ちになる方法に関心を持ったキヨサキ氏は9歳の時に、お金に関しては金持ち父さんの言うことを聞こうと心に決めました。
また、本書の中には、キヨサキ氏の実の父親である貧乏父さんが、お金のことは金持ち父さんに聞くように勧めるシーンもあります。本書は主に金持ち父さんの教えで構成されています。
『金持ち父さん貧乏父さん公式サイト』には「金持ち父さんと貧乏父さんの姿勢の違いを理解することが、経済的自由への道の最初の一歩を踏み出すためには不可欠だ」と書かれています。
2人の姿勢の違いを表す言葉として、重要であると広く指摘されているのが以下の内容です。
『金持ち父さん貧乏父さん』の中では、金持ち父さんと貧乏父さんたちを分ける決定的な違いとして、この考え方が書かれています。高い教育を受けた実の父がお金に苦労をし続けている間に、金持ち父さんがハワイで1番の金持ちになったのは、この考え方のおかげだったとキヨサキ氏は述べています。
キヨサキ氏は、金持ち父さんがこの考え方を何度も繰り返し教えてくれたとして、この考え方を「第一の教え」と呼んでいます。
本著の「おわりに」のパートに書かれていますが、「自分のためにお金を働かせる」というのは、勤労所得だけでなく、ポートフォリオ所得と不労所得を得られるようにするという意味です。例として、ポートフォリオ所得は株や債券など、不労所得の多くは不動産から得られると書いています。
そして、金持ち父さんは以下のようによく言っていたそうです。
また、税金は勤労所得に対するものが一番高いと述べ、税金に留意するようにも教えていました。
金持ち父さんと貧乏父さんはお金について正反対のことを言っており、その違いを理解することが経済的自由への最初の一歩だとしています。
なお、『金持ち父さん貧乏父さん』によると、金持ち父さんが30年間に渡ってキヨサキ氏に教えてくれたのは、大きく分けると6つのみだったそうです。それが以下の内容です。
キヨサキ氏は自国の法定通貨である米ドルを信用しておらず、「偽物のお金(フェイクマネー)」と呼んでいます。この不信感がビットコイン・金・銀を推奨する大きな理由です。
米ドルを信用していない理由は、1971年にまで遡ります。この年、米国のニクソン大統領が米ドルと金の兌換(交換)を停止し、金本位制が終了しました。2018年にキヨサキ氏は、金本位制の後、米ドルは全て偽物のお金になっていると主張しています。
金を裏付けにして米ドルが発行されていた金本位制が終了した後は、金の保有量に縛られずに法定通貨を発行できるようになって経済成長が促進された一方で、健全な法定通貨に必要な規律がなくなったとの見方があります。
結果的に、財政支出を補うために法定通貨の供給量が増え、法定通貨の価値の毀損が進んでいると言われています。
金本位制は『金持ち父さん貧乏父さん』にも出てきます。本著によると、金持ち父さんは「いつか金本位制がなくなって、米ドルと、有形で本質的な金銭価値を持つものとの交換ができなくなるという噂がある」と心配していたそうです。
この時に金持ち父さんは、金本位制が終われば世の中は大騒ぎになると警鐘を鳴らしていました。当時、キヨサキ氏は完全に内容を理解しているわけではありませんでしたが、「年月が経てば経つほど、その言葉の意味がよくわかるようになった」と書いています。
また、『金持ち父さんのアンフェア・アドバンテージ』の「ロバートから読者へ」のパートでは、以下のように記しています。
現在は、米国や日本など債務が拡大している国が多く、さらに債務が増える政策を実行しようとする動きもみられます。また、トランプ大統領がFRB議長の次の候補を早期に指名しようとして中央銀行の独立性を脅かしていることも米ドルの価値を下げているとの見方があります。
現在、キヨサキ氏が注目を集める大きな理由の1つは、書籍の内容や主張が、現在の世界状況にますます適合するようになっているからだとみられます。
金持ち父さんの教えでもう1つ重要だと指摘されていることは「ファイナンシャル・リテラシー」をマスターする必要があるということです。ファイナンシャル・リテラシーとは、「お金に関する読み書きの能力」や「数字を読む能力(会計力)」「お金の流れを読む能力」といった意味で使われています。
そして、まず大切なことは「資産」と「負債」の違いを理解し、その上で資産を購入し続けることだと金持ち父さんは教えました。資産が何かを決めるのは言葉ではなくて数字だと説明しています。
キヨサキ氏は『金持ち父さん貧乏父さん』で「金持ちになりたい人が知っておくべきことはこれにつきると言ってもいい」とまで書いています。本書に記している金持ち父さんの教えは以下の内容です。
例えば、多くの人が住宅ローンを組んで購入する「持ち家」を貧乏父さんは「資産」、金持ち父さんは「負債」と考えるというのが一例です。この違いを理解し、資産を買い続けることがお金持ちになるには重要だということを、キヨサキ氏は金持ち父さんから教わりました。
本記事では、キヨサキ氏がビットコインを勧める理由や書籍の内容などをまとめました。
ご注意いただきたいのは、キヨサキ氏による主張や金持ち父さんの教えが常に正しいとは限らないことです。例えば、持ち家の評価額が住宅ローンの残高を上回れば、ポケットにお金が入ることになります。
実際にキヨサキ氏も『金持ち父さん貧乏父さん』の中で、金持ち父さんの教えは「解答」ではなく、「指針」として受け止めて欲しいと書いていました。
一方で、法定通貨に対する懸念や、その懸念を軽減するためにビットコインを活用できることは、他の有識者も指摘しています。また、資産と負債の違い、ファイナンシャル・リテラシーの必要性などの金持ち父さんの教えは重要であるという有識者の指摘もあります。
仮想通貨にはリスクもありますが、ステーキングやレンディングなど、仮想通貨の値上がり益だけでなく利回りの獲得を狙える投資手段もあります。
仮想通貨の投資や運用に関心のある方は、日々発展する仮想通貨の学びを続け、まずはファイナンシャル・リテラシーを高めてみてはいかがでしょうか。その上で、実際に投資・運用を行う場合は、投資可能な範囲で少額から始めることをお勧めします。
はい。2019年に刊行された書籍『金持ち父さんの「これがフェイクだ!」』の中で、ビットコインやブロックチェーン技術に対する肯定的な見解が記されています。
「ビットコインは本当のお金だと思うか?」という質問に対し、キヨサキ氏は以下のように答えています。
また同書では、「仮想通貨やブロックチェーンは未来のお金になることは間違いない」とも記されています。
アルトコインに関しては、慎重な姿勢を示しています。2022年12月には、アルトコインの多くが米証券取引委員会(SEC)によって有価証券と見なされており、法的なリスクがあるとX(旧Twitter)で指摘しました。
一方で、ビットコインについては「金や銀のようにコモディティに分類されている」とし、より信頼できる資産と見なしていることを明言しています。
ただし、2024年5月にはYouTubeの動画でイーサリアム(ETH)を購入したと述べており、全くの否定ではないこともわかります。とはいえ、近年はビットコインに絞って推奨している傾向が強く見られます。
キヨサキ氏は、ステーブルコインに対して明確な発言をしていません。ただし、法定通貨への不信感をたびたび表明していることから、ステーブルコイン(法定通貨に連動するデジタル資産)に対して肯定的とは考えにくいです。
また、2024年2月には中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対して強く反対する立場を示しました。CBDCを「政府による国民監視の手段」とし、プライバシーや自由の侵害につながると懸念を表明しています。
▶本記事で言及した主な出典
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