ビットコイン、オンチェーン取引が空洞化=Glassnode
オンチェーン分析企業Glassnodeは19日に公開した週次レポートで、ビットコイン( BTC )価格が高騰する中、 ネットワーク活動との乖離が顕著になっていると指摘。今回のサイクルは過去のサイクルとは大きく異なり、投資家の取引活動が、オンチェーン市場からオフチェーン市場へ移行していることが明らかになった。
「オンチェーンのゴーストタウン」と題したこのレポートでGlassnodeは、ビットコイン価格が10万ドルの水準を上回る高値を維持している一方で、ネットワークの取引が「異常なほど静か」である原因を解明するため、ビットコインネットワークのトランザクション数を検証した。
2023~2024年に取引量は増加し、1日あたり最大73.4万件を記録していたが、2025年に入り、取引数は32万~50万件/日に減少し、ピーク時から大幅に縮小した。取引の種類別にみると、金銭的取引(価値の移動)は過去1年間で安定的に推移した。一方、InscriptionsやRunesなどのデータ埋め込みやトークン発行などの非金銭的取引は、2024年7~12月に急増し総取引数の増加につながったが、2025年以降は大幅に減少し、全体の取引数の縮小に大きな影響を与えた。
このようにビットコインの取引件数は減少しているが、ネットワークの取引量は依然として歴史的な高水準を維持している。年間平均では1日あたり75億ドル(約1兆894億円)の取引が行われ、2024年11月にビットコイン価格が10万ドルを突破した際には、160億ドル(約2兆3,241億円)のピークを記録した。
取引の内訳を見ると、10万ドルを超える取引は、2022年11月にはネットワーク取引量の66%を占めていたが、現在では89%にまで増加。大口投資家や機関投資家のオンチェーン活動が支配的になってきていることを示唆している。
一方、10万ドル以下の取引量は、2022年12月に34%の市場シェアでピークに達したのち、現在では11%と大幅に減少した。取引量別で見ると1,000ドル未満は3.9%から0.9%に、1,000ドル〜1万ドルは8.4%から2.1% に、1万~10万ドルは21.4%から7.9%と、それぞれのシェアが大幅に縮小している。
また、過去のサイクルではビットコインの価格高騰時には手数料も急上昇したが、現在はブロックスペースの需要が低いため、手数料の上昇圧力も抑制されており、オンチェーン活動が活発ではないことを示唆している。
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対照的に、中央集権型取引所(CEX)の現物取引やデリバティブ取引といったオフチェーンの活動は、非常に活発になっている。
CEXにおける取引活動は過去1年間、堅調に推移しており、現物取引量は1日平均が100億ドル(約1兆4,534億円)、2024年11月には230億ドル(約3兆3,428億円)でピークに達した。特筆すべきは、この現物取引量がオンチェーンの取引量と同じ規模となっていることだ。
デリバティブ市場に目を向けると、先物取引量は他の取引量より圧倒的に大きく、今回のサイクルで大幅に増加。1日平均で570億ドル(約8兆2,843億円)に達し、2024年11月には、驚異的な1,220億ドル(約17兆7,313億円)というピークを迎えた。
オプション取引量も、このサイクルを通じて大幅に増加し、1日平均は24億ドル(約3,488億円)、ピークでは50億ドル(約7,267億円)となった。
オフチェーン取引量(現物+先物+オプション)とオンチェーン取引量を比較すると、オフチェーンの取引量は常にオンチェーンの取引量の7~16倍となっており、活動の中心がオフチェーンに移行していることがわかる。
このような構造的な変化により、従来の指標では市場活動の全体像を把握できなく可能性があり、ネットワーク指標の解釈に影響を与えることが考えられる。オンチェーン市場はビットコインエコシステムと資本フローの基盤として重要な役割を維持する一方で、CEXへの入出金が、オフチェーンとオンチェーンを結ぶ重要なリンクとして機能する。
ビットコイン市場におけるデリバティブの重要性が増す中、レバレッジの蓄積を評価するため、レポートでは先物とオプション契約の未決済建玉を検証した。
両市場とも、ここ数年で未決済建玉が著しく増加しており、先物の未決済建玉は77億ドル(約1兆1,191億円)から528億ドル(約7兆6,739億円)に、オプションは32億ドル(約4,651億円)から434億ドル(約6兆3,077億円)に急増した。
デリバティブの未決済建玉総額は1,140億ドル(約16兆5,686億円)でピークに達し、現在も約962億ドル(約13兆9,815億円)と高水準を維持している。
2023年の未決済建玉の変動は穏やかだったが、2024年1月に米国ビットコイン現物ETFが導入されたことで、変動が激しくなった。レポートは、このようなボラティリティの上昇は、主に現物取引中心の市場から、よりデリバティブ取引を中心とした市場構造へと、市場全体が移行しつつあることを示していると指摘した。
このような変化は、連鎖的な清算リスクを高め、より不安定で反射的な市場環境の形成へとつながると危惧されるが、FTXの崩壊以降、建玉を支える担保構造も変化している。2018年から2021年には暗号資産(仮想通貨)の担保が好まれたが、現在では、証拠金としてステーブルコインを担保とすることが主流になってきており、未決済建玉の担保の大部分を占めているという。
裏付けとなる担保の構成が改善されたことは、仮想通貨のデリバティブ市場の成熟と、より安定したリスク管理慣行への移行を浮き彫りにしているとレポートは総括した。
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