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IPO発表のステーブルコイン大手Circle |USDC運営会社の戦略を徹底解説

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ステーブルコイン「USDC」 の発行元として知られる米Circle社は、安定性と透明性を兼ね備えたデジタル金融インフラの構築を進める世界的なフィンテック企業です。

2024年5月28日、同社は2,400万株のIPO(新規株式公開)を正式発表し、企業価値50億ドル(約7,200億円)での上場を目指すことを明らかにしました。一方で、リップルやコインベースからの 買収提案 も受けており、暗号資産業界での注目度の高さを物語っています。

本記事では、Circleの企業概要、収益構造、USDCや開発者向けプロダクトを通じた成長戦略、そして米国IPO計画の最新動向や日本市場での展開に至るまで、ステーブルコインの信頼性を支える「中核プレイヤー」の全体像を解説します。

Circle Internet Financial(以下、Circle)は、ブロックチェーン技術とステーブルコインを活用した次世代型の金融インフラ構築を目指す米国のフィンテック企業です。

2013年に設立され、当初は個人向けの送金アプリなどを展開していましたが、2018年には米ドル連動型のステーブルコイン「USD Coin(USDC)」を発行。これが現在の同社の中核事業となっています。

Circleの共同創業者兼CEOであるJeremy Allaire(ジェレミー・アレール)氏は、インターネット技術と金融の融合に早くから着目しており、「お金をインターネットネイティブな形で流通させる」というビジョンのもと、規制と透明性を重視したステーブルコイン事業を発展させてきました。

本社はニューヨークに置かれており、規制に準拠した形でのデジタル資産の発行・管理を行っています。Circleは金融サービスを提供するため、米国各州の送金ライセンス(Money Transmitter License)を取得しているほか、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の監督下でUSDCを発行しています。

現在、Circleは単なるステーブルコイン発行企業にとどまらず、法人向け決済、クロスチェーン送金、ウォレット基盤、API開発支援など多角的なWeb3インフラを提供する企業として、グローバルでの存在感を高めています。

Circleが発行する「USD Coin(USDC)」は、米ドルと1:1でペッグされたステーブルコインであり、2025年4月時点で約560億ドル(約8.8兆円)規模の発行残高を有する、業界第2位のステーブルコインです(※1)。

USDCは100%法定通貨建ての準備資産(現金および米国債)によって裏付けられており、監査法人Deloitte & Touche LLPによる月次レポートでその準備状況が公開されています。これにより、金融機関や機関投資家を含む幅広い市場参加者から高い信頼を獲得しています。

USDCは現在、Ethereum、Solana、Polygon、Arbitrum、Baseなど19のブロックチェーンに対応しており、相互運用性やスケーラビリティを重視した設計となっています。Circleは自社で提供する「CCTP(Cross-Chain Transfer Protocol)」を通じて、これら複数チェーン間のUSDC送金を安全かつ効率的に実現する仕組みを整えています。

USDCは分散型金融(DeFi)市場ではレンディングや流動性提供の基軸通貨として活用されており、中央集権型取引所(CEX)では基軸通貨や送金手段としてのニーズが高まっています。また、国際決済、越境Eコマース、法人向けトレジャリー運用などの分野にも用途が拡大しています。

こうした幅広いユースケースと高い信頼性により、USDCは単なる仮想通貨の一つではなく、次世代のデジタルドルインフラとして国際的なポジションを築いています。

※1:データ出典:CoinMarketCap、Circle公式情報(2025年4月時点)

Circleのビジネスは、ステーブルコイン「USDC」の発行・管理を中心に構築されていますが、その収益構造は複数の柱によって支えられています。透明性・安定性・相互運用性を軸としながら、金融インフラとしての信頼性を高める事業モデルを展開しています。

Circleの主要な収益源は、USDCの準備資産(リザーブ)から生まれる利息です。USDCの発行にあたっては、1USDCに対して1米ドル相当の準備資産を保有する必要があり、その多くは短期米国債や現金等により構成されています。

これらの準備金を安全性の高い金融資産で運用することで、利息収益が継続的に発生します。特に金利上昇局面においては収益性が高まり、Circleの事業を支える安定的な収益源となっています。

このモデルは、ステーブルコイン発行における金融業的側面を持ち、従来の銀行ビジネスに近い構造とも言えます。

CircleはUSDCの発行・流通に加え、開発者や企業向けのインフラサービスも展開しています。

たとえば、企業がUSDCを活用した決済や資金管理を容易に導入できるよう、以下のようなAPI・SDKサービスを提供しています:

これらのツールは従量課金制(ペイ・アズ・ユー・ゴー型)で提供されており、Web3事業者やグローバル企業のシステム統合ニーズに対応しています。Circleの収益多様化とエコシステム拡大を担う重要な事業領域となっています。

Circleは、米国各州の送金業ライセンスを取得し、準拠した形でUSDCを運用・発行しています。さらに、Deloitteによる監査を毎月受けるなど、規制対応と情報開示の透明性を重視した運営方針をとっています。

この姿勢は、金融機関や企業との提携、政府主導のパイロットプロジェクトへの採用など、B2B・公共領域での信用力向上につながっており、長期的な事業継続性の強化にも貢献しています。

CircleはUSDCのスケーラビリティと収益性を軸に据えつつ、金融サービス企業から「Web3時代の金融インフラ企業」への転換を進めているといえます。

Circleは、USDCを単なるステーブルコインにとどめず、グローバルなデジタル金融インフラの中核として展開することを目指しています。そのため、同社は世界各国の企業・金融機関・公共部門と積極的にパートナーシップを構築し、多様なユースケースの拡大を進めています。

2022年、スポーツブランドのASICSは、CircleのUSDCとSolana Payを利用した限定シューズの販売を実施しました。購入者はSolana Pay経由でUSDCによる決済を行い、Web3時代の新しい購買体験を提供する試みとして注目を集めました。

この事例は、非暗号資産企業によるUSDC活用の先例として、Circleのユースケース拡大戦略の一環を象徴しています。

2024年11月、Circleは大手暗号資産取引所Binanceと戦略的提携を締結。USDCを活用した決済・送金の高速化や流通拡大を目的とした取り組みを共同で推進しています。

これにより、Binanceの2億4000万人以上のユーザーがUSDC決済をよりシームレスに活用できるようになり、グローバルスケールでの普及が一段と進展

Circleのジェレミー・アレールCEOは「Binanceはグローバルに拡張するスーパーアプリであり、USDCがその金融基盤になることは大きなチャンス」と語っています。

Circleは2024年9月、ブラジルおよびメキシコの中央銀行決済ネットワークと統合したことを発表。これにより、現地通貨からUSDCへの直接交換が可能となり、ラテンアメリカ市場における金融包摂と決済効率の向上に貢献しています。

このような国家レベルでの提携も、Circleの規制対応能力と技術基盤が世界的に評価されていることの証左と言えるでしょう。

こうした提携網により、Circleは「USDCの流通拡大」だけでなく、「信頼性の高い金融ネットワークの構築」という役割も果たしています。

Circleは、米国における暗号資産規制の中で、もっとも積極的にIPO(新規株式公開)を目指すフィンテック企業のひとつとされています。

同社は2021年、SPAC(特別買収目的会社)を通じた上場計画を公表しましたが、SEC(米証券取引委員会)との協議の中で最終承認に至らず、2022年に計画を一旦断念していました。

その後、通常のIPOプロセスによる再上場準備を継続し、2024年5月28日についに2,400万株のIPOを正式発表しました。IPO価格は1株24〜26ドルの範囲で設定され、「CRCL」のティッカーでニューヨーク証券取引所への上場を申請しています。JPモルガン、シティグループ、ゴールドマン・サックスが共同幹事を務め、SEC登録届出書も提出済みとなっています。

同時期には、長年のパートナーであるコインベースや競合のリップルから買収提案も受けており、特にリップルからは40〜50億ドルでの提案があったものの、同社は最低50億ドル(約7,200億円)の企業価値評価を求めているとされています。

関連: IPO発表、ステーブルコイン大手Circle

CircleのIPOにおける最大の障壁は、USDCが「有価証券(証券型トークン)」に該当するかどうかという点にあります。

米国では、暗号資産を証券として分類するか否かがSECの判断に委ねられており、明確なガイドラインが整っていない中での上場審査は慎重を要するとされています。

仮にUSDCが証券と見なされれば、Circleの業務は追加の規制を受け、USDCの取扱いも証券法の下で大きな変更を迫られることになります。この点は、ビジネスモデルの根幹にかかわる重要な論点です。

SECは、ステーブルコインだけでなく、暗号資産関連企業全般に対して厳しい審査姿勢を取っており、リップル(Ripple)やクラーケン(Kraken)などの企業も同様の規制課題に直面しています。

特にリップルは、XRPの販売を証券法違反とされて提訴されたことにより、長年にわたりIPOが実現できていない状況にあります。

一方で、CoinbaseやMicroStrategyなど、一定の条件下で上場を果たしている企業もあり、規制対応と透明性確保がIPO達成のカギとされています。

2024年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が再選されたことで、暗号資産に対する規制緩和への期待が市場で高まっています。

トランプ政権は、Web3やステーブルコインに対して前向きな政策姿勢を示しており、Circleを含む暗号資産企業のIPO実現にも追い風となる可能性があります。

とはいえ、米議会やSECの対応次第では依然として予断を許さず、CircleのIPOは今後数年間の規制動向に大きく左右される状況にあります。

Circleは、USDCの信頼性や安定性だけでなく、その活用を支える技術基盤と開発者向けサービスにおいても業界をリードしています。特に注目されるのが、複数のブロックチェーン間でUSDCのネイティブ転送を可能にする「CCTP(Cross-Chain Transfer Protocol)」と、法人・開発者向けのAPIツール群です。

従来のステーブルコインのクロスチェーン送金には、ブリッジトークンやラップ資産を用いた複雑な手続きが必要でした。これに対し、CCTPはCircleが開発・提供するネイティブなUSDC転送プロトコルで、複数チェーン間の安全かつ効率的な資金移動を実現します。

CCTPの仕組みでは、送金元チェーン上のUSDCがバーン(焼却)され、送金先チェーン上で同額のUSDCが新たにミント(発行)されることで、裏付け資産の整合性が常に保たれる設計となっています。

2025年1月時点で、Ethereum、Solana、Base、Arbitrumなど計9チェーンに対応しており、今後はAptosやUnichainなどの高速レイヤー1/2への展開も予定されています。また、CCTPの次世代版「CCTP v2」も発表されており、数秒以内の低遅延クロスチェーントランザクションの実現が見込まれています。

Circleは開発者向けに、APIベースでウォレット機能を構築できる「Programmable Wallet」を提供しています。これにより、企業やアプリ開発者は自社アプリにブロックチェーンウォレットを簡単に組み込むことができ、Web3への導入障壁を大きく下げることが可能です。

同サービスでは、ユーザーの管理方法(セルフカストディ型/Circle側で管理するカストディ型)を柔軟に選択でき、決済・資産保管・NFT管理など多様なユースケースに対応します。

Programmable Walletは、グローバル展開するWeb3アプリやeコマース、フィンテック系サービスとの統合を見据えた基盤として、「Web3のインフラ」としての役割を担う存在になりつつあります。

Circleは上記以外にも、企業のニーズに応じた各種API群を提供しています:

これらのサービスは、従量課金モデルで提供され、スタートアップからエンタープライズ企業まで、あらゆる開発ニーズに応える柔軟性を備えています。

これらの技術とプロダクト群により、Circleは単なるステーブルコイン発行体ではなく、Web3時代の金融・開発インフラ企業としての存在感を高めています。

Circleは、2023年以降、日本市場への本格進出に向けて複数の戦略的提携を進めています。特に注目すべきは、国内最大手の金融グループであるSBIホールディングスとの協業です。

2025年3月、SBIホールディングスはCircle社のグループ企業と共同で、日本におけるUSDC普及を目的とした合弁会社の設立契約を締結しました。

この取り組みにより、Circleは日本の法規制に準拠した形でUSDCの提供体制を構築し、国内市場への長期的な参入基盤を確立しようとしています。

SBIの北尾吉孝会長は、「この提携は日本の金融アクセス向上とデジタル資産の革新を加速させるものであり、SBIグループのブロックチェーン戦略と合致する」とコメントしています。

一方、Circleのジェレミー・アレールCEOも「日本はWeb3とステーブルコイン規制の両面で世界をリードしている。SBIとの協力を通じて、日本の進化するデジタル経済に貢献できる」と述べ、強い意欲を示しました。

日本では2023年に「改正資金決済法」が施行され、ステーブルコインを「電子決済手段」として法的に定義。発行・流通に関する規制枠組みが明確化されました。

この法制度により、USDCの国内取扱いには「電子決済手段等取引業」の登録と、裏付け資産の全額保全が義務付けられています。これは世界的にも先進的なステーブルコイン規制であり、Circleの参入において重要な整備となっています。

2024年2月には、マネックスグループ傘下のコインチェック株式会社とCircleの提携も発表されました。これは、USDCの国内での普及促進とユースケース拡大を見据えた協力体制の一環とみられています。

Coincheckは既に国内で多数の暗号資産を取り扱っており、Circleとの連携により、越境決済やWeb3ゲーム内経済など新しい市場への対応力強化が期待されます。

USDCの導入により、日本国内でも次のようなユースケースの広がりが想定されます:

今後は、SBIグループやCoincheckなど既存インフラとの連携を強化しながら、日本におけるステーブルコインの本格的な社会実装が進むことが期待されます。

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