韓国統一省の当局者は5日、大手仮想通貨取引所バイナンスで起きた不正流出をめぐり、北朝鮮への制裁について政府内の議論はまだ始まっていないと明らかにした。聯合ニュースが報じた。
同当局者はソウルの政府庁舎で記者団に対し、ハッキング事件の正確な経緯を政府として十分に把握できていないため、対応策の検討にも入っていないと説明した。政府内部での情報共有と協議は必要だとしたうえで、「まだその段階に至っていない」と述べた。
米連邦捜査局(FBI)は10月31日、10月29日ごろにバイナンスから60億ドルを超える仮想通貨が盗まれた事件について、北朝鮮が関与したと発表した。FBIはこの北朝鮮のサイバー活動を「TraderTraitor(トレーダートレイター)」と呼ぶ。盗まれた資産は主にイーサリアム( ETH )に交換されている。FBIは分散型金融(DeFi)サービスなどを通じて資金洗浄が進むとみており、関連アドレスとの取引を遮断するよう事業者に呼びかけた。
バイナンスは被害規模を約63億ドルと見積もり、利用者の損失は同社が全額補填するとしている。発生直後には、ステーブルコイン発行体などとの連携により約30億ドル相当の資産をオンチェーンで凍結したと公表した。
TraderTraitorは、2025年2月に約15億ドルが流出したバイビットの事件や、2024年5月に約482億円相当のビットコインが流出したDMMビットコインの事件にも関与したとされるグループだ。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹で朝鮮労働党部長の金与正(キム・ヨジョン)氏は2日に談話を発表し、FBIの発表を「政治的挑発」だと非難して関与を否定した(朝鮮中央通信が3日に報道)。北朝鮮はこれまでもサイバー窃盗への関与を繰り返し指摘されてきたが、一貫して否定している。
鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相は今回の件とは別に、9月21日に非武装地帯(DMZ)内で起きた地雷爆発をめぐる対北制裁案にも反対してきた。この爆発では韓国兵3人が負傷し、うち2人が重傷を負った。野党は同氏の姿勢を北朝鮮に融和的すぎると批判しているが、鄭氏は制裁が北朝鮮を刺激するだけで成果を生まないとの立場をとる。
中央日報によると、韓国外交部は10月1日の国家安全保障会議(NSC)で、地雷事件への対応として北朝鮮の不正なサイバー活動を対象とする独自制裁を提示したが、鄭氏は地雷事件と無関係なサイバー制裁がなぜ必要かと疑問を示し、反対したという。


