ブロックチェーン企業シータラボのジエイ・ロングCTOが10日、Xで、ビットコイン( BTC )とイーサリアム( ETH )への潜在的な量子コンピューター攻撃に関する研究成果を明らかにした。研究者グループが攻撃の主要な計算工程における計算量の見積もりを従来の推定から大幅に引き下げたとする内容だ。
研究チームは、量子アルゴリズム「ショアのアルゴリズム」に使われる楕円曲線上の点加算演算を最適化し、回路の作業メモリに相当する論理量子ビット1,151と、演算処理の大半を占めるトフォリゲート130万で構成される回路を開発した。
公開チャレンジでは約2カ月間で提出スコアが107.5億から14.96億まで下がり、グーグル・クアンタムAIが3月に公表した基準値の半分以下となったという。
同チャレンジはブロックチェーンインフラ企業アイゲン・ラボズが主催し、イーサリアム財団やゼロ知識証明開発大手のスターク・ウェア、シータラボなど複数機関に所属する研究者100人以上が参加した。参加者は約2カ月間で400件超の改善案を積み重ね、それぞれが次の参加者の出発点になったという。
作業ではAIエージェントがコード作成や検証、細かな最適化を担い、人間は研究の方向性の決定や設計上の重要な変更を担ったとされる。
同チャレンジは、グーグル・クアンタムAIが3月に公表したゼロ知識証明を発端に始まった。グーグルは検証済みの回路の存在を示す証明を公開した一方で回路自体は非公開としたため、アイゲン・ラボズはその検証ツールを基に公開ベンチマークとリーダーボードを構築した。
研究チームは今回、提示した回路が攻撃全体を最適化したものではなく、物理的なエラー訂正やショアのアルゴリズムの全体計算を含まない主要工程の一つに過ぎないと説明した。ビットコインとイーサリアムは暗号方式「secp256k1」を採用しており、既存のシステムでこの成果を用いて両通貨を解読することはできないとしている。
論文には、ショアのアルゴリズムへの実装に近い形に調整した設計(スコア約19.6億)や、さらに改善が進んだ後発の設計(スコア約12.6億)も報告されている。提出締め切り後もさらに改善は続き、トフォリゲート数を95万2,707まで抑えた設計や、論理量子ビット数を813まで抑えた設計が新たに報告されたが、後者は計算量が大きく増加している。
量子コンピューター開発企業アイオンQの試算では、物理量子ビット数約2万を備えた誤り耐性型量子コンピューターがあれば、secp256k1の暗号方式を26日で破ることが可能になるという。
コインベースの諮問委員会は6月時点で、公開鍵がオンチェーン上に露出しているアドレスに約700万BTCのビットコインが存在すると推定しており、イーサリアムは2029年12月までに量子耐性への完全移行を目指す方針だ。
シータラボのロング氏は攻撃が差し迫っているわけではなく、対策に長い年月を要し事後適用もできないため緊急だと説明した。また、スターク・ウェアの共同創業者でCEOのイーライ・ベン・サッソン氏は、暗号解読コストが2カ月で半分に下がった以上、量子コンピューターの実現時期に関するあらゆる想定を見直す必要があると強調した。


