無料のNFTが約2.5万ドルへ?──Robinhood ChainでNFTが動き始めた
7月にRobinhood Chainの記事を書いたとき、追いかけていたのはRWAよりもミームでした。RobinhoodがStock Tokensをはじめとするオンチェーン金融を前面に出してメインネットを公開したのに、実際に大きな取引を集めたのはCASHCATなどのミームコインだったからです。
あれから約1カ月。最近タイムラインを見ていると、今度はRobinhood ChainのNFTを見かけるようになりました。その中でも目立っているのが、スーツ姿のブローカーを描いた4,444体のNFT「StonkBrokers」です。
StonkBrokersは7月17日に無料でMintされ、8月10日にはフロア価格が約2万5,800ドルまで上昇しました。8月12日に確認したCoinGeckoでも約2万4,200ドルで、24時間取引高は約18.8万ドルです。無料Mintから1カ月も経たずにこれだけの価格が付いているなら、Robinhood ChainではNFT市場そのものがかなり大きくなっているのか。そこで個別のNFTだけでなく、チェーン全体から数字を見てみました。
RWAチェーンでミームの次にNFTが動いた
Robinhood Chainは2026年7月1日にメインネットを公開したEthereum Layer 2です。Robinhoodは金融サービスやトークン化されたRWAを扱うためのチェーンとして展開しており、NVIDIAやAppleなどの株式を参照するStock Tokensもその中心に置いています。Robinhood公式も、Stock TokensやETFなどのトークン化資産をオンチェーンで保有、移転、アプリへ組み込めるネットワークとして説明しています。
ただし、メインネット公開後の取引は金融資産だけに向かったわけではありません。CASHCATなどのミームコインが早い段階から取引を集め、7月11日にはOpenSeaもRobinhood Chainへ対応しました。Stock Tokens、ミームコイン、NFTを同じマーケットプレイスから扱えるようになり、金融寄りだったチェーンの上に暗号資産らしい市場が次々とできています。
8月12日に確認したCoinGeckoでは、Robinhood Chain上のNFT全体の推計時価総額は約1億2,600万ドル、24時間取引高は約70.4万ドルでした。StonkBrokers以外にもChain Mancers、Cash Cats、PitBoys、pyopyopyopyoなど複数のコレクションで売買が発生しています。NFTが一つだけ高騰しているのではなく、その周りにも小さな市場ができています。
(
https://www.coingecko.com/en/nft/chains/robinhood
)
NFT市場の中心はStonkBrokersに偏っている
ここでRobinhood Chain全体と比べると、NFTの立ち位置が分かります。8月12日に確認したDefiLlamaではDEXの24時間取引高が約6.58億ドルあり、NFTの約70.4万ドルを単純に並べると約0.11%です。DEXとNFTでは取引の性質が違うため市場規模をそのまま比較する数字ではありませんが、少なくともRobinhood Chainの取引の中心がNFTへ移ったわけではありません。
(https://defillama.com/chain/robinhood-chain)
その一方、NFT市場の内側には大きな偏りがあります。CoinGeckoが集計したNFT市場全体の推計時価総額約1億2,600万ドルに対し、StonkBrokersは約1億760万ドル。約85%を一つのコレクションが占めていました。
取引のされ方も一様ではありません。同じ時点で、StonkBrokersはフロア価格約2万4,200ドルで24時間の売買件数が8件だったのに対し、Cash Catsは約144ドルで522件、PitBoysは約420ドルで132件、Chain Mancersは約2,340ドルで103件が売買されていました。StonkBrokersは価格と評価額で突出していますが、その下ではもっと安いNFTが細かく売買されています。
ここまで数字が偏っていると、StonkBrokersが単に早く出たPFPだから、という説明だけでは足りません。プロジェクトを遡ると、そもそもNFTだけを売るために作られたものではありませんでした。
StonkBrokersはNFTを入口にDeFiへつなぐ
開発元のClutch Labsは、Robinhood Chainのメインネット公開より前からStonkBrokersを作っていました。2026年2月にはテストネット上で、ERC-6551を使ったNFTだけでなく、Uniswap V3ベースのDEX、トークンローンチャー、NFTマーケットプレイス、カバードコールまで組み合わせたDeFi環境を公開しています。
HackQuestに掲載されたプロジェクト説明でも、StonkBrokersはコミュニティ形成、流動性、取引を一つにつなぐ仕組みとして説明されています。NFTを販売して終わるのではなく、まず保有者を作り、その周囲にトークンや取引、流動性を置く構成です。メインネット版でも$STONKBROKERやAnvil AMMなどがNFTの周囲に組み込まれています。
その設計に使われているのがERC-6551です。通常のNFTは人のウォレットに入っていますが、ERC-6551を使うとNFT自身にも「Token-Bound Account」と呼ばれるアカウントを持たせられます。そのNFTが暗号資産や別のNFTを保有し、アプリケーションとやり取りできるようになります。
ERC-6551の仕様では、ゲームキャラクターが装備を持つケースや、複数の金融資産をまとめたポートフォリオなども利用例として挙げられています。
国内ではNTTドコモのブロックチェーンゲーム「GT6551」が分かりやすい例です。レーシングマシンNFTに部品NFTやドライバーNFTを組み合わせ、一つのマシンとして扱います。GT6551では「車がパーツを持つ」、StonkBrokersでは「ブローカーNFTがStock Tokenを持つ」。ERC-6551によってNFTそのものが別の資産を抱えられる点は共通しています。
StonkBrokersでは4,444体それぞれにERC-6551のアカウントが作られ、Mint時からStock Tokenが入る設計になっています。公式ドキュメントではTSLA、AMZN、PLTR、NFLX、AMDなどが例示されており、NFTを取得するとピクセル画像だけでなく、資産を持てる専用アカウントも一緒に付いてきます。
ただし、ここでいうStock TokenはTeslaやAmazonなどの株式そのものではありません。Robinhood Assets (Jersey) Limitedが発行するtokenized debt securitiesで、対象となる株式への経済的なエクスポージャーを提供する一方、原資産に対する法的・受益的権利を与えるものではありません。Robinhoodによれば、流通するStock Tokenは対応する原資産によって1対1で裏付けられています。
RWAの入口は金融商品だけではない
Robinhood Chainが7月にメインネットを公開したとき、表に出ていた主役はStock TokensやRWAでした。ところが実際の取引ではミームコインが先に動き、その後NFT市場が立ち上がり、StonkBrokersではNFTそのものがStock Tokenを持つところまで進んでいます。
これは単に「RWA、ミーム、NFTが全部あるチェーンになった」という話ではありません。StonkBrokersを作ったClutch Labsは、NFTを保有者やコミュニティを作る入口に置き、その先にトークン、DEX、流動性を用意しています。Robinhoodが金融側からStock Tokensを持ち込んだ一方で、ユーザー側ではNFTやミームから金融機能へ入る経路が作られています。
8月12日時点でNFTの24時間取引高は、DEXと比べれば約0.11%です。それでも公開から約1カ月の間に、100ドル台のNFTが一日に何百回も売買され、無料MintだったStonkBrokersには約2万4,000ドルのフロア価格が付き、そのNFT自身がStock Tokenまで保有しています。
RWAの実用化というと、株式や債券をトークンにして取引する場面が先に浮かびます。Robinhood Chainでは、その金融資産がミームやNFTの中へ入り始めました。 RWAの次の利用先が、Stock Token単体の取引画面ではなく、NFTや暗号資産アプリの側から生まれている 。StonkBrokersを追っていると、Robinhood Chainのこの1カ月はそこが一番おもしろいところです。
※価格・市場データは2026年8月12日に確認した公開情報をもとに記載しています。記載しているのは過去の実績であり、将来を保証するものではありません。NFTはトークンと比較すると流動性が低く、急落しうる可能性もありますのでご注意ください。
※本記事は、公開情報をもとに暗号資産・ブロックチェーン関連ニュースを整理した一般的な情報提供であり、特定の暗号資産やNFTの売買を推奨するものではありません。
参考文献
Robinhood「Robinhood Accelerates Global Expansion with Robinhood Chain Mainnet, Stock Tokens, Agentic Trading and New Suite of DeFi Products」
https://robinhood.com/us/en/newsroom/robinhood-accelerates-global-expansion-robinhood-chain-mainnet-stock-tokens-agentic-trading/
Robinhood「Robinhood Chain」
https://robinhood.com/us/en/support/articles/robinhood-chain-mainnet/
Robinhood「Invest with Stock Tokens」
https://robinhood.com/rhj/stocktokens/
OpenSea「Robinhood Chain Is Live on OpenSea」
https://opensea.io/blog/articles/robinhood-chain-is-live-on-opensea
CoinGecko「Robinhood NFT Collections: NFT Floor Price & Market Cap」
https://www.coingecko.com/en/nft/chains/robinhood
CoinGecko「StonkBrokers NFT Floor Price Chart」
https://www.coingecko.com/en/nft/stonkbrokers-434284142
DefiLlama「Robinhood Chain」
https://defillama.com/chain/robinhood-chain
StonkBrokers「Documentation」
https://www.stonkbrokers.cash/docs
StonkBrokers「The Stonk Broker Terminal」
https://www.stonkbrokers.cash/
Clutch Labs
https://www.clutch.markets/
HackQuest「Stonk Brokers (The Stonk Exchange)」
https://www.hackquest.io/vi/projects/Stonk-Brokers-The-Stonk-Exchange
Ethereum Improvement Proposals「ERC-6551: Non-fungible Token Bound Accounts」
https://eips.ethereum.org/EIPS/eip-6551
NTTドコモ「NFT最新規格ERC6551を搭載するブロックチェーンゲーム『GT6551』を開発」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000356.000118641.html