米証券取引委員会(SEC)は、予測市場連動型の上場投資信託(ETF)について、追加情報の提出を求め、上場時期を延期した。ロイター通信が4日、関係筋の話として報じた。
対象となるのは、ラウンドヒル(Roundhill Investments)、ビットワイズ(Bitwise)、グラナイトシェアズ(GraniteShares)の3社が2月に申請した24本超の銘柄だ。これらは、一定期間内にSECが異議を唱えなければ自動的に有効になる仕組みを前提にしていた。
しかし、期限到来を前にSEC側が各社に対し、商品の構造や開示内容に関する追加情報の提供を求めたため、今週中の上場は見送られた。
各社が申請した銘柄は、2028年の米大統領選や2026年の中間選挙に加え、ハイテク業界の人員削減規模や景気後退の発生確率など、さまざまな事象に連動する予測市場を対象としている。急成長する予測市場ビジネスをETFとして商品化し、個人投資家が株式と同様の手軽さで取引できるようにする狙いがある。
関係者によると、この遅延は一時的な措置と見られている。
ビットワイズの最高投資責任者(CIO)マット・ホーガン氏は、「この分野は規制や監督体制とともに急速に成熟している」と述べた。ビットコインETFなど過去の革新的な商品と同様、時間をかけた審査を経て、最終的に上場に至るとの見方を示した。
今回のSECの判断には、予測市場をめぐるインサイダー取引や市場操作への警戒感が背景にあると見られる。
2026年に入り、予測市場の公正性めぐる事例が相次いで報じられている。中でも注目を集めたのは、現役の米軍兵士がベネズエラ大統領関連の機密情報を不正に利用し、予測市場「ポリマーケット(Polymarket)」で取引して多額の利益を得たとして、米司法省(DOJ)に刑事起訴された事例だ。これは予測市場におけるインサイダー取引を対象とした刑事摘発であり、業界に大きな衝撃を与えた。
こうした動きを受け、商品先物取引委員会(CFTC)は、詐欺や市場操作に加え、インサイダー取引についても既存の法規制を積極的に適用する姿勢を示した。
米ホワイトハウスは3月24日、全スタッフに対し予測市場を含む金融市場での機密情報を利用しないよう求める内部通達を出した。ニューヨーク州とイリノイ州も州職員に同様の行政命令を発令している。
5月1日には米上院が、議員およびスタッフによる予測市場での取引を禁じる規則変更を全会一致で可決し、即日発効した。
予測市場プラットフォーム各社も、相次いで自主規制を強化している。
米カルシ(Kalshi)は4月22日、自身が出馬する選挙結果に賭けた連邦議会候補者3名に対し、取引停止と罰金の処分を科した。同社やポリマーケットは、政治家やアスリートなどの関係者による「インサイダー取引」を禁じるルールを明文化している。
さらに、ポリマーケットはブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)との提携を発表した。オンチェーンデータの解析を通じて、不正取引の検知体制を強化し、市場の健全性確保を図る狙いだ。
ブラジルでは4月24日、中央銀行と財務省が共同で、選挙や社会情勢などの事象を対象としたデリバティブ取引を国内で禁止する規則を公布した。これを受け、ポリマーケットやカルシを含む28のプラットフォームが国内からアクセスできない状況となっている。
ポリマーケットは現在、ベルギー、オーストラリア、英国、イタリア、ポーランド、シンガポールなど30カ国以上で、アクセスが制限されているとされる。日本も、規制上の理由からアクセス制限対象国に含まれている。台湾のように、特定の市場(政治賭博)のみを禁止する国もあり、国ごとに対応は分かれている。
米国では2024年にカルシがCFTCとの訴訟で一定の勝利を収め、選挙市場の取引が急速に拡大した。その一方で州レベルでは反発も強く、法的措置が相次いでいる。
4月23日には、ウィスコンシン州司法省がカルシやロビンフッド、コインベースなどの主要5社を、州の商業賭博禁止法に違反しているとして提訴した。ニューヨーク州も、無許可の賭博運営を理由にコインベースとジェミニに対するの訴訟を提起した。イリノイ、アリゾナ、テネシー各州も独自の法的措置を講じている。
一方でCFTCは4月3日、コネチカット、アリゾナ、イリノイ各州を相手取り、予測市場に対する州規制の差し止めを求める訴訟を提起した。CFTCは、予測市場をめぐる連邦規制当局としての管轄権を主張している。 連邦法と州法の優先関係をめぐり、法廷闘争が本格化している。


