暗号資産(仮想通貨)分析企業のクリプトクアントは22日、週間市場レポートを発表。イーサリアム( ETH )リステーキング・プロトコル「Kelp DAO(ケルプDAO)」へのハッキングの影響が、他のDeFi(分散型金融)市場に伝染した状況を分析した。
ハッキング後、DeFiの主要な市場で流動性が枯渇し、借入金利が急上昇している。
4月19日、Kelp DAOのクロスチェーンブリッジが攻撃を受けた。犯人は裏付けのないrsETHを不正に引き出し、これを担保としてアーベ(Aave)などのレンディング市場でWETHやステーブルコインを入手している。
クリプトクアントによると、アーベはそのコントラクト上で全rsETH供給量の約83%を保有していた。その中に不正発行されたrsETHが混じることにより、アーベは約1億2,400万ドル〜2億3,000万ドル(約198億円~370億円)規模の不良債権リスクにさらされていると推定される。
なお、ステーキングプロトコル最大手のLido DAOは23日、rsETHの欠損補填のためにエコシステム横断の共同支援を行う提案を公開した。
クリプトクアントは、ハッキング発生後、流動性ひっ迫の中、ユーザーがプロトコルから資金を引き出すためにステーブルコインなどを借りようと殺到したため、アーベ上で最大の2つのステーブルコイン市場で流動性が逼迫したと指摘する。
このため、特にステーブルコインとイーサリアムの借入金利が急上昇。AAVE V3におけるUSDTとUSDCの借入金利は、ハッキング後に3.4%から14%へ急上昇している。
イーサリアムの借入金利も8%まで急上昇し、その後約5%で安定した。これはハッキング前の2%の2倍以上だ。ETH、USDC、USDTは、アーベ上で最大の市場である。これらの市場の金利が同時に急上昇したことは、プロトコル全体における流動性の急減を示している。
また、Ethena Labsによる大手ステーブルコインUSDeの純発行も急減し、償還が加速した。この背景には、ハッキングによるrsETHの不正引き出し後に、DeFi全体でリスク回避の行動が広がったことがある。
さらに、無期限先物のファンディングレートがマイナス(ショート側がロング側に支払う)の状況が続いたことで、USDeのデルタニュートラル戦略による利回りが圧迫されたことも、償還(引き出し)を促す要因になっていた。
USDeは、合成型ステーブルコインであり、米ドルと同じ価値を維持しながら保有者には高い利回りも提供する。この利回りは、先物市場でのファンディングレートに依存しており、これがプラスの間は収益が得られるが、マイナスになると運用利回りが低下したり損失に転じるリスクがある。
このため、トレーダーにとってはUSDeを保有するメリットが低下していたとみられる。
クリプトクアントは、USDeの総供給量は、わずか3日間で8億ドル(14%)減少したと指摘する。58億ドルから50億ドルへと減少しており、この規模はUSDe史上最大級の短期的な償還イベントの一つになった。
このことは、ハッキングの影響を直接受けなかった、より広いDeFiエコシステムから流動性が大きく流出したことを示している。