米財務省のサム・コーコス最高情報責任者(CIO)が、アンソロピック社の次世代AIモデル「Claude Mythos(クロード・ミトス)」へのアクセスを求めていることが、14日に明らかとなった。ブルームバーグが報道した。
この動きは、先週財務省のサイバーセキュリティチームに対して行われたブリーフィングに基づくもので、強力なAIシステムから生じうる将来的な脅威に対し、金融システムの脆弱性を自ら先んじて特定することを目的としている。
一方で、米国防総省(DoD)においては、ピート・ヘグセス長官が今年3月にアンソロピック社を「サプライチェーン・リスク」に指定し、軍事システムからの同社製品の排除を決定した。
これは、同社が国内監視や完全自律型兵器へのAI利用制限の解除を拒否したことに起因しており、国防総省は民間ベンダーが指揮系統や軍事目的に制限を設けるべきではないと批判している。アンソロピック側はこの指定を「不当な報復」として提訴しているが、財務省側はこれら他省庁の制限に抗い、独自の導入を選択した形だ。
アンソロピック側が限定公開した資料によれば、Mythosはあらゆる主要なOS(オペレーティングシステム)やウェブブラウザの脆弱性を識別・悪用できる極めて高い能力を有している。同社のセキュリティチームは、Mythosが27年前から存在していたOpenBSDのゼロデイ脆弱性や、通常の自動テストでは検出不可能なビデオライブラリの欠陥を特定した事実を公表しており、これが官民に深刻な衝撃を与えている。
こうした事態を受け、ベッセント財務長官とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先週、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー等のウォール街幹部を招集する緊急会議を財務省本部で開催した。当局者は大手金融機関に対し、Mythosがもたらし得るシステミック・リスクを深刻に捉え、アンソロピックによる新たなサイバーセキュリティ組織「プロジェクト・グラスウィング」を通じて防御体制を構築するよう求めている。
導入を主導するコーコスCIOは、イーロン・マスク氏が昨年主導した政府効率化省(DOGE)の一員としても知られ、2025年半ばの就任以来、AI技術の活用を積極的に推進してきた。
JPモルガン・チェースをはじめとするメガバンク各行が既にMythosの内密なテストを開始する中、財務省が自ら技術の詳細を深掘りし、リスクを正確に把握しようとする積極的なスタンスは、AI時代の金融安定性を確保する上で極めて重要な転換点と目されている。


