キャシー・ウッド氏率いる投資運用会社アークインベストと金融サービス企業アンチェーンドは11日、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン( BTC )に対する量子コンピュータの脅威を詳しく分析するレポートを発表した。
長期的にはリスクとなるが、ビットコインの暗号を破るには現在の技術を大幅に超える能力が必要だと結論している。
まず、現在の量子コンピュータは約100個の論理量子ビットと数百の回路深度にとどまっていると指摘した。ビットコインの楕円曲線暗号(ECC)を破るには、これを大幅に上回る2,330個以上の論理量子ビットと、数千万から数十億の量子ゲートが必要だとしている。
レポートは、進化は突発的なものではなく、段階的な技術的進展になると予想。量子コンピュータは次の5つのステージを踏んで進化していくとの見方を示す。
その上で、最もバランスの取れたシナリオにおいては、今後10〜20年でビットコインの暗号解読が可能な量子コンピュータ(ステージ3)が登場すると予想。ビットコインのコミュニティが耐量子暗号(PQC)への移行を完了させるための時間的猶予があるとの見解を示した。
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アークインベストらはその他に、悲観・楽観それぞれのシナリオも分析した。
悲観的シナリオは、次世代AI(人工知能)の活用などにより量子コンピュータが急激に進化し、準備が間に合わない場合だ。そのケースでは、ビットコインだけでなくインターネット全体のセキュリティが先に崩壊するため、社会全体での調整が必要になってくる。
量子コンピュータが突発的に進化した場合は、銀行、医療、通信、政府機関などが一斉に混乱に陥り、社会のあらゆるデータセットの整合性を疑わせる混沌とした状況になりうるとも指摘した。
ただ、ビットコインの耐量子暗号(PQC)提案はすでに存在しているため、ネットワークを守るためのアップグレードは迅速に行われると考えられる。一方で、緊急対応にはリスクもあり、バグなどセキュリティ上の欠陥や、ウォレットの買い替え必要などユーザー負担も発生する可能性がある。
楽観的シナリオは、開発が技術的な壁に当たり、進展がさらに数十年遅れるというものである。
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アークインベストらは、ビットコインコミュニティはすでに量子耐性の確保に向けて動き出しているとも指摘した。
例えば、米国家標準技術研究所(NIST)は、格子ベースのML-DSAなどの耐量子暗号標準をすでに公開しているところだ。また、ビットコインのアドレスを量子耐性にするためのプロトコル・アップグレード提案(BIP360など)も議論されている。
一方で、対応策についてのコンセンサス形成や、サトシ・ナカモトの持つコインなど、「紛失した」とされている、量子に脆弱な古いビットコインを凍結すべきかといった問題も残される。
業界内での具体的な動きとしては、例えば大手仮想通貨取引所コインベースが1月、量子コンピュータがビットコインやイーサリアム( ETH )など仮想通貨に与えるリスクを評価するため、独立諮問委員会を設立した。
イーサリアム財団も1月、量子コンピュータ対策チームを結成。量子耐性を持った開発者用テストネットワークも稼働を開始している。
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