ナイジェリアは、仮想通貨取引を税制に組み込む措置を導入した。
2026年1月1日に施行されたナイジェリア税務管理法(NTAA)2025により、納税者番号(TIN)と国民ID番号(NIN)を用いた本人確認による仮想通貨取引の報告制度が始まった。当局はブロックチェーン上の取引を直接監視するのではなく、既存の税務・本人確認システムを活用する。
この仕組みは先進国とは異なるアプローチだ。日本では仮想通貨事業者のライセンス制度、マネーロンダリング対策、税務開示といった複数の層で報告義務が課されているが、ナイジェリアは国民の本人確認情報に基づく一元的な執行体制を採用している。
ナイジェリアでは、自国通貨ナイラの価値不安定や厳しい資本規制により、外貨へのアクセスが制限されている。こうした経済環境を背景に仮想通貨の利用が急速に拡大しており、同国の仮想通貨採用率は世界トップ3に入る。
新たな枠組みでは、取引所と仮想通貨プラットフォームが主要な執行層として機能する。仲介業者は本人確認データを収集し、取引活動を報告し、必要に応じて税金を控除する。
ナイジェリア・ブロックチェーン産業調整委員会のラッキー・ウワクウェ(Lucky Uwakwe)委員長は、この枠組みに関する構造的課題を指摘した。
同氏によると、NTAAの起草段階で仮想通貨業界は正式に協議されなかった。政府は一般的な税制改革の意見公募を行ったが、仮想通貨に特化した内容を示さなかったため、業界側は十分な準備ができなかったという。
「税務当局から、仮想通貨に関する税法を制定しようとしているという正式な通知はなかった」とウワクウェ氏は述べた。
ナイジェリアが仮想通貨課税を正式化した決定は、より広範な財政圧力と持続的な歳入制約を反映している。BusinessDayによると、ナイジェリアの税収対GDP比は2025年時点で約9.5%と、世界で最も低い水準にある。同紙が引用したアナリストは、このような狭い課税基盤が財政の柔軟性を制限し、借入への依存を高めていると指摘した。
改革による改善はすでに予測されている。BusinessDayが参照した国際会計事務所PwCの試算によると、ナイジェリアの税対GDP比は改革の効果により2026年には約10.2%に上昇する可能性がある。
コンプライアンスの向上が継続すれば、2027年までに約12.5%まで上昇する可能性がある。その水準でも、ナイジェリアは国際金融機関がしばしば用いる15%の基準を下回ることになる。
政府はより長期的な目標を掲げている。同報道によると、当局は3年以内に税対GDP比を18%に向けて引き上げることを目指している。この戦略は、表面的な税率の引き上げではなく、課税基盤の拡大を優先している。
本人確認と連動した仮想通貨報告は、デジタル資産活動を既存の税制に統合することで、このアプローチに沿ったものだ。当局は、仮想通貨の正式化を歳入の安定化、赤字の管理、債務依存の軽減に向けたより広範な取り組みの一要素と位置付けている。
政策立案者にとって、仮想通貨報告は単独の施策ではない。それは課税網の拡大、財政の安定化、借入依存の軽減に向けた広範な取り組みの一部を形成している。
新規制の特徴は、ブロックチェーン監視ではなく既存の税務・本人確認システムで仮想通貨を規制することだ。約2200万人(人口の10.3%)が仮想通貨を使用しているが、ナイジェリアには1億5000万人以上の納税対象者がいる。
「仮想通貨だけを監視すれば、大半の課税所得を見逃すことになる」とウワクウェ氏は説明する。ブロックチェーン監視には新システム構築と多額の投資が必要なため、当局は既存インフラを拡張する道を選んだ。
取引所はTIN、NIN、顧客詳細を収集し、取引価額、資産種類、サービス活動を報告する。当局は資産が規制プラットフォームに出入りした時点で、報告された仮想通貨活動と申告所得を比較する。ブロックチェーンを直接監視せず追跡可能性を実現する仕組みだ。
ChainalysisとEcofin Agencyのデータによると、サハラ以南アフリカは2024年7月から2025年6月に約2050億ドル(約32兆円)の仮想通貨取引を処理し、前年比52%増となった。ナイジェリアはその約45%、約921億ドル(約14兆円)を占める。
仮想通貨取引の24時間体制と価格変動性は、定期報告サイクルで運営される税制との調整を難しくする。明確な技術ガイダンスがなければ、プラットフォーム間で解釈のばらつきが生じる恐れがある。
日本や米国でも、仮想通貨税務報告が安定するまで数年を要した。ナイジェリアの枠組みは初期段階にあり、技術ガイダンスとプラットフォーム調整が重要になる。
国際取引所にとって、この構造は新たな国境を越えたコンプライアンス圧力をもたらす。プラットフォームは、ナイジェリアの報告要件をマネロン対策規則やOECD連携税務報告基準を含む本国管轄区域での義務と調整する必要がある。
2024年にナイラサービスを停止したバイナンスは、サービス再開時に拡大された本人確認と報告義務に直面する。
新たな枠組みでは、取引所が政府に代わって税金を徴収・送金する役割を担う。「ナイジェリア政府は仮想通貨税を直接徴収しない。プラットフォームが代わって徴収し送金する」とウワクウェ氏は述べた。この構造により、取引所が執行の中心に置かれることになる。
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ステーブルコインは2024年のサハラ以南アフリカにおける仮想通貨取引量の約43%を占めた。Chainalysisは、ナイジェリアが2023年7月から2024年6月に約220億ドル(約3兆4000億円)のステーブルコイン取引を処理したと推定する。
「ステーブルコインはすでにアフリカ経済のあらゆる場所に浸透している」とウワクウェ氏は述べた。ステーブルコインにより、個人と企業は物理的な銀行支店に依存せずドル建ての価値にアクセスできる。
同氏は具体例を挙げて説明した。モバイルマネーをステーブルコインに変換し、銀行支店を訪れることなく国際送金が可能になる。この実用性主導の採用が、政府の監視強化にもかかわらず仮想通貨が成長し続ける理由だという。
こうしたアフリカ全域での仮想通貨採用の急拡大を背景に、ケニア、ガーナ、南アフリカも同様の傾向を報告している。大陸全体の規制当局は、ブロックチェーン監視を回避しながら既存の税制を活用するテンプレートとして、ナイジェリアのモデルを注視している。
ただし、同様の枠組みを他国が導入する際には、行政能力が鍵となる。本人確認インフラが弱い国は、ナイジェリアのような本人確認連動の課税制度を実施するのに苦労する可能性がある。
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ユーザーの行動が枠組みの実効性に影響を与える。一部は規制プラットフォームを通じてコンプライアンスを遵守するが、他のユーザーは自己保管、P2P取引、分散型金融に活動を再編成する可能性がある。これらの対応は合法だが、執行成果を弱める可能性がある。
今後12か月間、プラットフォームコンプライアンス率、P2P取引量、ステーブルコイン使用パターン、仮想通貨関連税収が有効性を決定する重要指標となる。
「政府は税金を徴収する必要があるが、最良の結果を望むなら方法が重要だ」とウワクウェ氏は述べた。
NTAAは仮想通貨税務執行の法的根拠を確立した。その影響は実施の規律、行政能力、市場反応を通じて明らかになる。
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訳、編著:CoinPost編集部
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