日米当局による為替協調介入の観測が高まる中、円が対ドルで急騰している。この動きは、リスク資産を長期にわたり支えてきた「円キャリートレードの巻き戻し」につながるとの警戒感を呼び、ビットコイン( BTC )への売り圧力が高まっている。
日本の長期的な超低金利環境は、円キャリートレードを支えてきた。ほぼゼロに近い金利で円を大量に借り、それをドル建ての債券やビットコインなど、リターンが期待できる資産に換えて運用するのが、円キャリートレードの仕組みであり、世界中の機関投資家やヘッジファンドにとって絶好の「燃料」となってきた。
しかし、日米当局による協調介入などで急激な円高が進むと、状況は一変する。
円で借入をしている投資家にとって円高は借金の膨張を意味し、返済のために運用先の資産(株やビットコインなど)を売却して円を買い戻す必要に迫られる。その結果、これらの資産に対する売り圧力が高まる。
ビットコインは24時間365日取引できる流動性の高さから、パニック時には「最も売りやすい」資産として真っ先に売却される傾向がある。また、レバレッジ取引が多いため、為替市場の混乱がビットコイン市場内の強制ロスカットを誘発し、価格の急落を起こしやすいという特徴がある。
HashKey Groupのシニアリサーチャー、ティム・サン氏は、「介入への警戒の高まりによって、ボラティリティ・プレミアムが上昇し、レバレッジポジションの維持コストを急激に高めた結果、資金がビットコインから流出した」と指摘している。
2024年8月には、日銀の利上げと米国の景気後退懸念が重なり、急激な円高が進行。円キャリートレードの巻き戻しが主な要因となり、ビットコイン価格が数日間で20%近く急落した例がある。ビットコインは6日間で64,000ドルから49,000ドルに暴落。仮想通貨市場は6,000億ドルの価値を失った。
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一方で、こうしたビットコイン価格の急落は、中長期的な視点に立てば、むしろ新たな上昇トレンドへの呼び水になると指摘する専門家も少なくない。
FRBによるドル売り・円買い介入は、市場へのドル供給を促し、実質的なドル流動性の拡大を意味する。その結果、ドル安が進行し、世界的な流動性が高まる局面では、通貨インフレのリスクヘッジとして、発行上限のあるビットコインや、貴金属のような「希少資産」に資金が還流するシナリオも指摘されている。
サン氏は、ビットコイン価格が本格的な上昇トレンドに転じるには、円相場のボラティリティ低下と米ドル安の進行が不可欠だと指摘する。円が安定し、為替介入のリスクが市場に完全に織り込まれるまでは、投資家のリスク回避姿勢が続くと予想。それまではビットコインへの売り圧力が継続するとの見解を示した。
著名仮想通貨アナリストのアーサー・ヘイズ氏は、FRBによる介入は実質的なドルの増刷と同義であり、「ビットコインにとって極めて強気な状況」であると指摘。以前から米ドルの流動性とビットコイン価格の強い相関性を強調してきた同氏は、今回の局面も上昇のトリガーになると分析している。
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