ゲーム事業などを行う東証プライム上場のKLabは5日、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン( BTC )と金(ゴールド)を財務資産に組み込む「デュアル・ゴールド・トレジャリー戦略」を実施すると発表した。
戦略の目的は、持続的な企業価値向上と財務基盤の強化。同日発表した資金調達で得る約51億円のうち36億円(70%)を使い、6対4の割合でビットコインとETF等を含めた金を購入すると説明している。
同社は今年11月、経営戦略の一環としてビットコインを購入したことを発表していた。この時に2,000万円で約1.2BTCを購入したと説明しており、ビットコインを財務戦略に取り込むのは今回が初めてではない。
関連: モバイルゲーム大手KLab、ビットコインをトレジャリー資産として購入
今回、「デジタルゴールド」と考えるビットコインと「リアルゴールド」である金の2つ(=デュアル)のゴールドを組み合わせて新たに戦略を策定した背景には、日本円の購買力の低下がある。
発表では、現金は最も安全な資産とされてきたが、世界的なインフレ進行と構造的な円安圧力によって、日本円の購買力は低下し続けていると指摘。同社はこの環境変化を「サイレント・クラッシュ(見えざる資産価値の毀損)」と捉えていると述べ、現金だけでは株主価値を守りきれないと判断したと説明した。
そして、発行上限があって希少性が高いビットコインを成長エンジンとし、歴史ある価値の保存手段で市場混乱時に強さを発揮する金を安定のアンカーにすると説明。性質の異なる2つのゴールドを組み合わせることで、インフレ耐性を高めつつ、リスクを抑制した資産成長を目指すとした。
また、円建て負債を活用してビットコインを購入する上場企業が先行している中、同社はさらに保有資産に金を加えることで、より堅牢な防衛網を構築するとも述べている。
関連: ビットコインを保有する上場企業ランキング|日本・米国の注目企業を解説
今回の戦略についてKLabは、資産の分散だけでなく、現代ポートフォリオ理論と数学的アプローチに基づいた5つの狙いがあると説明した。
1つ目は「デジタルとリアルの融合によるリスクヘッジ」。相関性が低い、または時には逆相関となるビットコインと金を組み合わせることで、単一資産保有時のリスクを抑制し、シャープレシオ(投資効率)の向上を図れるメリットがあるとしている。
2つ目は「円安・インフレに対する鉄壁の防衛」。特定の国や中央銀行に依存しない無国籍資産であるビットコインと金を保有することで、円安進行時における円換算での資産価値上昇を享受して、実質的な企業価値を保全するとした。
3つ目は「株式市場暴落へのヘッジ機能」。伝統的に株式市場と逆相関の動きを見せる傾向のある金をポートフォリオに組み込むことで、世界的な株価暴落時における同社の純資産の下支え効果(プットオプション的効果)を期待すると述べている。
4つ目は「シャノン・デーモン効果によるボラティリティの利益化」。価格変動を利用したリバランス(比率調整)を規律を持って行うことで、市場が横ばいであっても資産が増加する数学的理論「シャノン・デーモン」の応用を目指すと説明した。
5つ目は「幅広い投資家層への訴求」。金を組み込むことで、成長を期待する投資家層だけでなく、保守的な投資家にも安心感を提供して株主層の拡大を図るとしている。
なお、同社の株価は5日の終値で274円。前日比で3.4%上昇した。一方、6日にかけてのPTS(私設取引システム)取引における株価は240円で、基準値比で12%超下落している。
関連: 金(ゴールド)価格に合わせて動く仮想通貨とは?市場の広がりとこれから