イーサリアム将来価格2025展望 | ETF・機関投資家・開発動向の注目点
イーサリアム (ETH)は、スマートコントラクト基盤としてアルトコイン最大の時価総額を誇る暗号資産(仮想通貨)です。最も多くのユーザーベースと分散型アプリケーション、巨額のDeFi市場を持つブロックチェーンとして、暗号資産エコシステムの中核を担っています。
2025年5月現在、イーサリアムは価格調整局面から「ペクトラ」アップグレードを契機に回復の兆しを見せています。米国ではグレースケールのETF(上場投資信託)からの資金流出が落ち着きつつある中、ブラックロックによるステーキングETF申請など、複数の好材料が浮上しています。
この記事では、イーサリアムの最新価格動向と将来性について、主要な機関投資家の分析を踏まえて解説します。ヴァンエックやアークインベストといった期間投資家による将来展望やETH価格予測、ZK技術の可能性、そしてスマートコントラクト市場におけるイーサリアムの位置づけを検証していきます。
2025年5月20日時点、イーサリアム価格は36.7万円で、過去最高値(2021年11月16日の70.6万円に対して約48%低い水準で推移しています。
特に5月上旬には市場センチメントが最悪期を迎え、CryptoQuantのデータによれば、5月9日時点でイーサリアムウォレットの半数近く(6,550万アドレス)が含み損の状態に陥りました。
さらに注目すべき指標として、ビットコイン建てのイーサリアム比率「ETH/BTC」が歴史的な底値ゾーンに到達。この比率は、2017年初頭や2019年初頭に続き、約4年周期で底値を形成している状況です。
昨年、米国で承認されたイーサリアム現物ETFの累計総純流入額は2025年5月19日時点で25.3億ドル程、この数字はビットコインETFの累計純流入額(420億ドル)と比較すると伸び悩んでいます。
主な要因の一つは、米グレースケールのイーサリアム信託(ETHE)からの大規模な資金流出です。ETHEは私募ファンドからETFに転換しましたが、高額な手数料と売却制約がある旧体制から投資家の資金が急速に流出しています。
上図を見ると、グレースケールのETHEは、2024年7月時点の純資産額86億ドルに対して、現在約28億ドルまで低下(約67%の資金流出)。*同時期にETHの価格も3,400ドルから2,500ドルへと約26%下落しました。この大規模な資金流出は ビットコインETF の発売当初でも見られた動きです。イーサリアム全体の需給バランスに大きな影響を与えていると分析されています。
しかし、5月7日の大型アップグレード「 ペクトラ 」の導入をきっかけに、状況は好転の兆しを見せています。ペクトラは、ステーキング効率、ユーザー体験、バリデーター運用、レイヤー2スケーラビリティを改善するコード変更を含む重要なアップデートです。
これを転機に、イーサリアムはその後一週間で約50%の価格上昇を記録し、投資家の買い意欲を取り戻しつつあります。
5月17日頃、ETH/BTCの比率を見ると、イーサリアムは2019年以来初めてビットコインに対して「極端な過小評価ゾーン」に入りました。歴史的に見ると、同様の状況が観測された2017年、2018年、2019年の後には、イーサリアムがビットコインを大幅にアウトパフォームする期間が続いており、現在も強い平均回帰の可能性が市場で意識されています。
この状況は、ヘッジファンドのポジション調整(BTCロング・ETHショート)とも密接な関連があると分析されています。多くの機関投資家が過去12〜18ヶ月間このポジションを取っていましたが、現在はその巻き戻しが始まりつつあります。
イーサリアムETFは重要な進化を遂げようとしています:
注目すべきは、5月の「ペクトラ」アップグレードがETF進化の技術的基盤を整えた点です。特にEIP-7251により、最大2048ETHまでのバリデータ運用が可能になり、ブラックロックの121万ETH保有を効率的にステーキングできる環境が整いました。
これは機関投資家向けの戦略的なアップデートであり、価格上昇からの利益(キャピタルゲイン)に加えて、インカムゲイン(利回り)を提供する手段となります。グレースケールからの資金流出が落ち着く頃に、この魅力的な投資商品が新たな資金流入をもたらす可能性があります。
暗号資産運用企業Bitwiseのマット・ホーガン最高投資責任者は5月13日、「ビットコイン以外にも分散投資すべきか」と考える投資家が増加していると 指摘 しました。イーサリアム価格の最近の反騰が主な根拠となっています。
ホーガン氏は、イーサリアムなどのブロックチェーンがグーグルなどと同様の汎用技術であると語っており、これは後述する長期的なスマートコントラクト市場の拡大予測とも整合する見方です。
彼の分析によれば、インターネット初期にGoogleだけでなく、各領域のリーダーとなったAmazonやNetflixにも投資しておくことで、投資家はより大きな利益を得られた可能性があります。この見方は後述する長期的なスマートコントラクト市場の拡大予測とも整合します。
世界的な資産管理会社 バーンスタイン (Bernstein)の分析によれば、イーサリアムの価値向上を支える3つの重要な要因が存在します:
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機関投資家によるイーサリアム購入の事例も急増しています:
このように短期間のうちに複数の機関投資家がイーサリアム購入を公表し始めている点は、市場センチメントの変化を示す重要な指標と言えるでしょう。
イーサリアムの将来価値を予測する上で最も重要な指標は、スマートコントラクト市場の成長性です。各投資機関の分析を総合すると、この市場の拡大がイーサリアム価格に大きな上昇余地をもたらす可能性があります。
Ark Invest は、スマートコントラクト市場が 2030年までに5.2兆ドル(約780兆円) に達する可能性があると予測しています。特筆すべきは、この市場が年間4,500億ドル以上の手数料収入を生み出す可能性があるという点です。
そして、イーサリアム価格上昇の本質は「価値蓄積メカニズム」にあります。ネットワーク使用料がトークンの価値源泉となり、バーン(焼却)メカニズムによってETHの希少性が高まるという仕組みです。 Grayscale は「 手数料収益こそが、最も強く時価総額と相関する指標 」と結論付けています。
こうした手数料収益の成長予測に基づき、VanEckは2030年のイーサリアム価格について3つのシナリオを提示しています:
上図からも明らかなように、イーサリアムはすでに大型テックプラットフォームに匹敵する収益力を持っています。現状の年間手数料収入は28億ドルですが、VanEckの基本シナリオでは2030年までに 年間660億ドルのフリーキャッシュフロー に拡大すると予測されています。
VanEckが分析するイーサリアムの主要ターゲット市場と、ブロックチェーン全体で獲得可能と考えられるシェアは以下の通りです:
特に注目すべきは、これら4分野の総市場規模が15.2兆ドルに達する点です。この巨大な潜在市場に対して、イーサリアムがどれだけのシェアを確保できるかが、将来価格を左右する最大の要因となるでしょう。
イーサリアムの将来価値を考える上で重要なのは、単なる投機的な価格変動ではなく、継続的な技術革新とエコシステムの拡大が生み出す実質的な経済価値です。ZK技術の発展、グレースケール流出の終了、ステーキングETFの登場といった複数の好材料が重なれば、イーサリアム市場は新たな成長フェーズに入る可能性が高いでしょう。
イーサリアムはブロックチェーン業界において「モジュラーアプローチ」をいち早く採用し、複数の技術革新を並行して進めています。特に「ゼロ知識証明(ZK)」技術は、「解を明かすことなくそれが正しいことを検証できる証明」を可能にする暗号技術であり、イーサリアムの将来において中核的な役割を果たすと見られています。
イーサリアム・エコシステム内部では「ZK is the Endgame(ゼロ知識証明が最終的な解決策)」という見解が広まり、イーサリアムの創設者Vitalik Buterin氏もzk-rollupが中長期的にすべてのユースケースで適用可能になると述べています。この技術がもたらす処理速度の向上、手数料の削減、プライバシー保護の強化は、先に述べたスマートコントラクト市場の5.2兆ドル成長シナリオの技術的基盤として必要不可欠です。
2025年5月時点のイーサリアム市場を整理すると:
これらのファンダメンタルズと技術的指標を総合すると、現在のイーサリアム市場は中長期的な投資機会を提供している可能性があります。市場のセンチメントが最悪期を脱し、技術進化と機関参入が加速する中、イーサリアムは暗号資産市場における中核的な地位を再確認しつつあります。ただし、仮想通貨市場特有の高いボラティリティは依然として存在するため、投資にあたってはリスク管理を徹底することが重要です。
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